2016年01月31日

ピアノと調律師、そしてピアノの演奏者について その4

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          ↑ピアノの弦とチューニングピン


 ピアノと調律師、そしてピアノの演奏者について その4

『調律と調律師について- 3』

 CMSレコードエンジニア、小宮山のブログを普段はお送りしていますが、昨年の12月から、不定期の連載という形で、CMSレコードを主宰しております、私、細川正彦が、「ピアノと調律師、そしてピアノの演奏者について」と題して、文章を書かせて頂いております。

 今日はその四回目。 かなりの長文ですが、できるだけ解り易く書いたつもりですので、最後まで読んで頂ける様、お願い申し上げます。


 これまで書いて来たことについて、短くまとめてから、そのあとに、新しい話を書きたいと思います。

 「ピアノと調律師、そしてピアノの演奏者について その1」で書いた事。

 ピアノを弾く人間、特にそれを職業にして、ライヴハウスなどで演奏している人の中には、意識的に、もしくは無意識のうちにピアノの状態に無頓着になっている人が多いという事実。それを意識しすぎると、仕事に差し障りがある、、ということが現実である。

 「ピアノと調律師、そしてピアノの演奏者について その2」で書いた事。

 調律とは何か?。 調律(ちょうりつ) 整調 (せいちょう) 整音(せいおん)など、いわゆる総合調律について。
 「ピアノと調律師、そしてピアノの演奏者について その3」で書いた事。

 調律とは、とても厳格で、繊細な作業であるが、演奏者はそれ自体に無関心で、その内容について、調律師に任せすぎてはいないだろうかという事。健全なピアノメインテナンス環境を構築するためには、演奏者もしくはピアノオーナーと調律担当者の対話が必要ではないのか、ということ。
 


 さて、それでは、どのようにしたら、ピアノという楽器を良い状態にキープでき、演奏者、ピアノオーナー、聴衆などピアノを演奏して生まれる音楽を楽しむ人達が幸せになれるのか、、について、前回に続いて『調律と調律師について- 3』として書いてゆきたいと思います。

 ここで調律にも善し悪しがある、、ということを書かなくてはならないのですが、これについては、いろいろかきたいことがあります。
 まず、私が調律や、ピアノの機能というものに興味があり、同業者とその手の話をしようとした時に、少なからず、彼らの口から出る言葉があります。

 それは、、、「調律師によって、そんなにピアノの音がかわるものなんですね、、?」というもの、、。

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 これはある意味本当に頭が痛い話です。 ピアノを演奏している人、しかもそれを生活の糧にしている人達の多くが「調律」という仕事を、その程度にしか考えていないという事実を、ほとんどの人は知らないのかもしれません。 
 多くのミュージシャン、ピアノ以外の演奏者は会えば、最近はどんな楽器を使っているのか?、メンテはどこの誰に任せているの?、、等、そういう話に花が咲くわけですが、ピアニストは普段の仕事の環境で、決して自分の楽器を使う事はないとはいえ、あまりにも同じ音楽家としてのスタンスがちがいすぎます。 それはこの文章の第一回目でも書きましたが、ある意味「しょうがない事」、とはいえ、あまりにも残念というほかありません。
 
 「調律師によって、そんなにピアノの音がかわるものなんですね、、?」という言葉は言い換えれば、「調律なんて誰がしても一緒じゃないんですか?」という無言の意志を感じる言葉ですが、、。 コンサートなどで頻繁に演奏している人以外は、多くのピアノの演奏者は仕事で使うお店などのピアノの調律師と会う事はほとんどありません。 ということは、それらの演奏者の場合、知っている調律師は自分の家のピアノを調律する人くらいのものである、ともいえます。 

 これが、調律の仕上がりを、比較する、、ということをしないということを、無意識のうちにしなくなる理由の一つなわけですが、調律は、どこかで誰かがしていて、その現場に立ち会う事はほとんどないし、立ち会いたくても、それはかなわない、、ということが多い、ということもあります。でも、誰がやってもかわらないと思っている時点で、職人(ピアニスト)として、芸術家として、失格だと思いますよ。職人をバカにしています。

 じゃあ、「ピアノなんて、誰が弾いても一緒、、、?」なのですか、、?、と、そう言う事を言うピアニストに尋ねてみたいものです。
 
 では、ここで、良い調律とはどんなものなのか?ということについて、簡単に(1〜3)書いてみたいと思います。

 1 調律の仕上がりが良いこと。

 これに関しては、ときどき、ギターのチューニングメーターで、ピアノも合わせられないんですか?ということを尋ねられますが。多くの音域で、複数の弦が一つの鍵盤に割り当てられており、それらをわずかに、巧妙に音程をずらして音色を造り上げる、、ということが調律作業であり、一本づつの弦のチューニングをする為のギターのチューニングメーターではピアノは調律できません。 i Phone のアプリで、調律専用というのがあるみたいですが、、。 あれはまた別の物です、出来ない事はありません。

 ピアノの調律(音律)は他の楽器とは少し異なっており、かなり大雑把に言って、高いところに行けは行く程、少し低めに、そして、低いところに行けば行く程少し高めに、、という独特のカーブが存在していて、それがしっかり頭に入っていて、なおかつそれを、チューニングハンマーをつかって、ピアノの弦をその音律に正確にあわせる、という作業をしなければなりません。

 このあるべき音律にかなり正確に(厳格に)、合わせせることが出来た時だけ、本来のピアノの音色ができあがり、色々な和音、メロディーを弾いた時にピアノ独特の豊かな広がりのある音響が表現されます。

 これに関しては、残念ながら、調律師の十人のうち一人つまり、、一割に満たない人数(より少ない、、)の人しか、ちゃんと出来ているひとはいません。つまり、世の中のほとんど調律師が、厳しい言い方をすれば、それができていない、というのが現状です。これは、それを望む演奏者がもっと増えれば、改善されるはずなのですが、なかなかそういう方向には現実は向いていません。

 2 調律の持ちが良いこと。

 「調律の持ちが良い」ということはどういうことなのか、、。 これはつまり、調律が終了して、調律師が造りあげた音律が、演奏者が弾いても、弦がすぐにゆるまずに、いつまでも狂わずに同じ音程を維持し続けられるということ。 それから、少し乱暴に弾いても、特定の弦だけが激しくゆるんでしまい、いわゆる、ホンキートンク状態にならない、、ということも大切です。

 これは言い換えれば、狂い易い調律とそうではない調律が存在していて、実は、多くの調律師それをある程度調節して調律する事ができる、、ということなのです。 

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 つまり、安いお金で調律を依頼された場合、いつまでもその調律がもってしまっては、今度はいつ依頼がくるか解りませんから、わざと狂い易く仕上げる、、という技をもっている人は少なからず居る、、ということなのです。
 ですが、もともと調律がヘタで、一生懸命やっても、あまりもたない調律しかできない調律師もたくさん居る、ということも、覚えておいて下さい。 本気でやって、コンサートや、レコーディングで、途中でなおさなくても良い調律が出来る人は、調律の仕上がりが良い人と同じで、ほんの一握りしかいません、残念ながら、、。

 よく、予算のないお店などで、調律師におねがいして、、というか、値切って安くあげてもらうことがありますが、そう言う場合、余程バカ正直な人でない限り、直ぐに狂う様に調律して帰ります。 お金がないので、コーヒーを半分だけ下さい、というお客がいたら、それにしたがって半分だけコーヒーをだしますか?そんなばかなお願いをして、それがかなえられると思っている経営者がいるとしたら本当に情けないことです。

 そして、狂い易くなれば、結局何度も調律しなければならないわけですが、ここで知って欲しいのは、調律作業はピアノの寿命を間違えなく縮めるということです。 何度も何度も弦をハンマーで引っ張れば、弦はダメージを受けますし、調律の仕上がりが悪ければ、狂いも多いですから、その分多めにひっぱってダメージも大きくなりますし、弦をとめている、チューニングピン(弦をとめている黒い棒状のもの)を何度も大きく回すと、だんだんゆるんで来て、しまいには調律が不能になります。そういうピアノをよくライブハウスで見ますね。

 これに関しては、上手い調律師ほど、チューニングピンをできるだけ水平にまわして(アップライトの場合垂直に)、ピンと、ピンが刺さっている板に負担をかけない様に作業をしています。 ピンは覗いてみると、金色に塗装したフレームの金属盤にささっている様に見えますが、それは表側だけで、ピンの先端が刺さっている場所(内側)は、木製の板なのです。 不必要に何度もピンをぐりぐり回してしまえば、当然差し込まれている木の板の穴は大きくなってゆるんでしまいます。

 よく、調律を頼む予算がない、と言って、お店の人が、チューニングハンマーを手に入れて、自分で調律をなおすおこがありますが、そういう素人が、ピンを回して、調律のまねごとをするのが一番ピアノに良く無いのです。


 3 調律だけでなく、整調、整音など、ピアノの内部の事もわかって、調整することができること。

 ピアノと調律師、そしてピアノの演奏者について その2『調律と調律師について-1』のところで書きましたが、調律以外の作業、つまり、メカニズム(鍵盤まわりのネジやバネなど)の調整や、ピアノの弦を打って、直接音を出している、ハンマーの状態を調節して音色をコントロールすることができて、初めてちゃんとピアノの面倒を見られる調律師である、と言えるわけですが、これもまた、調律師の80%以上の人は、この作業をちゃんと出来ない、というのが現実です。 
 こういった修理というか、調整は主に、ピアノの製造工程、つまりピアノ工場での作業経験がない人には難しい作業です。 また、仮に、そういった職務経験がある調律師でも、ごく若い時にそれを経験しただけで、調律を本業にしてからは、主に調律作業だけで、それらの作業実績の少ない人は、それらをしっかり行えるということは滅多にありません。 医学の世界でいえば、手術経験のない医師とおなじで、いきなりお腹を開いてもろくな施術はできないどころか、患者の生命を奪ってしまう可能性すらあります。

 医師免許をもっていれば、だれでも立派に手術できるわけではない、という様に調律師ならだれでも、整調、整音ができるというわけではありません。

 特に整音作業、つまりハンマーに針を刺したり、削ったり、硬化材を塗ったりという作業は、慣れない人間がやれば、ハンマーの寿命そのものを縮めるどころか、一発で交換しなければならなくなってしまうこともあり、経験と慎重さが必要なとても難しい作業です。

 ここまで書いて私が他に言いたい事としては、仮に調律作業(チューニング)が上手くても、整調、整音が下手な調律師もいますし、整調、整音が上手にできる技術者でも、調律が巧くない、、という調律師も存在します。 なぜならば、それらの技術は全く別の作業なので、ピアノを良い音に保つという意味では共通の目的をもってやる作業ではありますが、それぞれの技術は全く別のものである、ということです。

 これらの作業を上手にこなす為には、実際の仕事の現場だけでなく、自身で工場を持ち、いろいろと実験や、試行錯誤を繰り返して、言い換えれば、失敗も繰り返して、徐々に技能を身につけてゆかなければなりません。

 一般家庭では電気ピアノが多く生のピアノ自体の数が減っている昨今、調律師という職業を生業にし、自身の力で研究をし、技能を高めてゆくことは並大抵のことではなく、収益を維持しつつ、ピアノと言う楽器の状態を、いろいろな角度から見極めながら調整作業を行ってゆくということは、余程の情熱がなければできないことです。

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2016年01月04日

ピアノと調律師、そしてピアノの演奏者について その 3

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 あけましておめでとうございます。 CMSレコードを主宰しておりますピアノ演奏者、細川正彦です。 本年もCMSレコードを、よろしくお願い申し上げます。

 昨年の12月18日に書きました、「ピアノと調律師、そしてピアノの演奏者について その 2」に続く文章を掲載させていただきます。

 この連載にはそれなりの反響をいただきまして、私のフェイスブックに、ブログの読者から、荒川三喜夫氏作の連載漫画、「ピアノのムシ(芳文社コミックス刊)」という大変興味深いコミックがあるというお知らせをいただきました。

 早速第一巻を手に入れて読みましたが、これがなかなか興味深い内容で、私の言わんとしている内容にも重なるモノが多々あり、とても参考になる書籍でした。 このような漫画本も出ている、ということは、現在の状況は一昔前より多少はよくなっているのではないのか、と推察するわけですが、この私の文章共々、ピアノのメインテナンスに興味がある方も無い方も、特にピアノを弾く方には是非、読んで頂きたいと思った次第です。


ピアノと調律師、そしてピアノの演奏者について その3

 『調律と調律師について-2』

 調律師は孤独な職人である、、、。 これはまず最初に書いておきたいことです。

 何故かと言うと、、、この連載で、最初の方に書いている通り、実はピアノ演奏者は他の人が思っている程、ピアノに詳しくない、ということがあります。 なので、調律師は依頼されてお金をもらって調律をしますが、ピアノのウイークポイント、や長所、そのピアノの状態について、ほとんど弾き手と、ピアノの状態について、情報を共有することなく、仕事を進めています。

 これは演奏者の自宅のピアノについてもそうですが、お店のピアノなら、なおさら、不特定多数の演奏者が弾いているわけですから、調律師と演奏者のコミュニケーションはほとんどありません。お店のオーナーや店長さんなどピアノを弾かない人達とも、ほとんどそういった情報の交換はないでしょう。

 唯一あるとしたら、弦が切れてしまった場合などに、お店の人が連絡して、弦を張り替えたりするときに、その状態に付いて少し話す位ではないでしょうか、、。

 医学に例えれば、ピアノが患者でピアノ演奏者が患者の家族、調律師が医師なら、モノを言えない患者(ピアノのこと)や家族とのコミュニケーションが全くないまま、治療がすすんでいる、、ということになります。 
 すべて「おまかせ」、、というのは、聞こえがいい表現ですが、言ってみれば、あえて、悪い言い方をすれば、これは調律師のやりたい放題、、ともいえないことも無い、わけです。

 それは、「難しい技術的なことには口を出さない方が良い、、」「素人が口出しするとろくなことが無い、、」という社会通念もあるとは思いますが、そう言った事情以外には、調律師のほうで、あえて情報公開をしていない、、というところもあります。 こういう状況は他の楽器とその演奏者にとっては全くあり得ない、ある意味完全に異常な状況である、、ということの自覚がピアノという楽器の周りに居る人達には全く理解されていないのです。

 ここで、少し観点を変えて書こうと思いますが、いろいろなピアノ演奏者がいて、いろいろなタッチ、音色、テクニックでピアノを演奏するわけですが、果たして調律師という技術者は人によってどの位仕事に違いがあるのでしょうか?。

 本来あるべき音律にピアノの音を調律する、、ということは、メカニズムなどの整調もそうですが、一つのリファレンスな状態というものがあって、人によって音律が違う、、ということは、本来許されることではないはずです。

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 調律師という仕事が何故あるのか?、、ということについては、その作業自体が専門性が高く、特殊な技術を必要とする職種であるから、、、ということだと思うのですが、よく、私に、「そんなに調律にうるさいのなら、もう自分でやった方がいいのでは、、?」ということをおっしゃる方がいますが、素人の私がちょっとやそっと、訓練してできるような、簡単な仕事ではない、と、これは断言できますね。

 なにしろ、公称で半音の200分の一、人によっては500分の一以上の音程の細かさを正しく認知できなければ、できない仕事といわれていますから、仮に私が訓練をして、ある程度その技を習得できたとしても、鍵盤は88個ですが、弦は二百本以上ありますので、すべての弦を調律した後に、演奏をする、、という無謀なことは出来ないと思います。人間の集中力は無限ではありませんから。
 ピアノに比べればすぐ終わる6本のギターの調弦とはわけがちがうのです。
 
 ところで、この章の最初に書いた「調律師は孤独な職人である」ということは、どういうことなのか、、。
 上に書いたような、本当に細かい神経を使う仕事である調律の作業なわけですが、もちろんピアノの音、楽器の響きを完全に決定するとても大切な作業なわけです。

 そのような細かい作業ですから、当然その日の体調とか、精神状態が、良くも悪くも多少は仕事の内容に反映されることがある、、わけですが、ほとんどの場合、それは誰にも気付かれない細かい違いしかありませんし、調律師がお客のまえでは決して「今日はなんだか仕上がりがイマイチだな、、」、とか「今日は滅多に無い良い仕上がりだ、、」などということは、絶対に言いません。

 個人宅のピアノであれば、調律が終われば、必ずピアノの所有者である演奏家にかならず試奏してもらい、チェックしてもらうわけですが、その際も「いかがですか?」とお客にかならず尋ねるわけですが、その時は、よっぽどのことがない限り、お客がたナニか意見を言う、、ということなく、仮に調律の出来が悪かったときは、「わかる訳が無い、、」と内心は思いながらも、おくびにも出さず、お決まりの返事をまっています。

 「大丈夫です、ごくろうさまでした」。

 これは、ほぼ毎日の様に日本中で行われている、ほぼ儀式に近い様な、調律終了時の確認作業なわけですが、これは、床屋や、美容院での仕上がりを鏡を見ながら確認する作業にも似ているわけですが、美容師とお客の場合、お互いどうして欲しいという希望をある程度は把握していて、それをめざして作業を進めるわけですが、ピアノ調律の場合は、「くるった調律をなおす」という以上の作業には実際のところなりません。

 前の方に書いた様な、こうあるべき状態、リファレンスな状態ということを、ピアノ演奏者はどれ位知っているのでしょうか?、そして、調律師はどれだけその状態に自分の技術でピアノの状態を近づけることができるのでしょうか?。
 私が言いたいことは、ピアノ演奏者はもっとピアノの状態に興味を持つべきだということと、調律などのいわゆる、標準的な状態、リファレンスな状態というものを正確に知る努力をして欲しいということです。

 もし、ピアノ演奏者がもっとそう言うことに興味を持てば、ピアノの技術者である、調律師は他の楽器のリペアーマンの様に、顧客の希望を聞きながら、より細かい作業をすることができるでしょうし、より高い評価を受ける為に技術の向上も望めるかもしれません。

 「もしそんなことに本当になったら、手抜きをしているのがバレてしまって、たまったもんじゃないぞ、、」という悪い調律師の声も聞こえてきそうですが、実際のところ、技術の優劣より、お客のあしらい方(口の巧さ)、所属している会社の評判、、といった、本質とはかけ離れたところでの評価しか、多くの調律師には与えられていない、というのが、残念ながら現在のというか、昔からの状況なのです。

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2015年12月18日

ピアノと調律師、そしてピアノの演奏者について その 2 (昨日のブログ)


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 みなさんこんにちは、CMSレコードを主宰しております、プロデューサーでピアノ演奏者の細川正彦です。
ピアノと調律師、そしてピアノの演奏者について」と題しまして、12月2日に書きました文章の続きを、このブログにのせたいと思います。 

 ライブハウスやホールのピアノ、そしてピアノのユーザーやオーナー、そして調律師などについてのリアルな実情と、その環境を如何に改善し、音楽文化にどのような良い影響を与えられる情報を発信できるか、ということを考える、という目的でこの文章を、書いています。

  ピアノと調律師、そしてピアノの演奏者について その2

 『調律と調律師について-1』

 前回書いたこと、意外とピアノを弾く人間、特にそれを職業にして、ライヴハウスなどで演奏している人の中には、意識的に、もしくは無意識のうちにピアノの状態に無頓着になっている人が多いという事実。

 今回はピアノの面倒をみる、調律師について、書きたいと思います。

 前回も書きましたが、他の楽器と違ってピアノという楽器の内部を触る人は調律師以外には基本的には居ないということなのですが、一昔前に比べ、電気ピアノに取って代わられ、ピアノという楽器の数が少なくなっているので、調律師の数も減っているという事実があります。

 かつての調律師の職場と言えば、ホールや、ライヴハウスといった演奏の現場より、一般家庭や、ピアノ教室といった教育の現場が多かったと思います。それらは、いわゆる「お稽古」のピアノレッスンに通っている人の家のピアノなどで、お客(ピアノのオーナー)はほとんどが女性だったと思います。

 ピアノを弾く人口の、半分以上が男性ではなく、女性で、こういう事を決めつけては、「私はそうじゃない!」と怒られてしますかもしれませんが、女性は基本的にはメカニックに弱いことが多いので、実質的に調律師になにかオーダーを出すことはなく、言ってみれば、「お任せ」状態で、調律をしてもらっているというのが現状だと思うのですが、実はこれは男性のピアノ演奏者でもほとんどかわり無く、ピアノの中のことは調律師にお任せ、、ということはほとんどの場合といって良いと思います。


 いってみれば、車のメンテと同じ、、。車のメンテは男性のなかにはいろいろ知識がある人もいますが、、。

 多くのカーユーザーが、車検などで、特に注文を付けること無く、お任せで整備を依頼していますが、ピアノの場合もほぼ同じと言って良いと思うのですが、これは他の楽器と違い、機械部分が多く、外からは見えにくい楽器の内側の部分も多い、ということもあると思います。でも、ここで、ピアノのオーナーや、特にピアノを弾く人には、次の3つの言葉を覚え、その意味について考えてほしいのです。

  1 調律(ちょうりつ) 2 整調 (せいちょう) 3 整音(せいおん)

 1の調律はもちろん、ゆるんだピアノの弦をチューニングハンマーを使ってしめ、音律を合わす作業。 2の整調というのは、機械部分の細かな調整をすることで、ピアノの世界では、なぜか「調整」の 「調」の字と、「整」の字を入れ替えて「整調」と言っています。

 整調がちゃんと出来ていないピアノを弾くと、鍵盤の重さが場所によって違うとか、戻りが早いところと遅いところがある、など弾きにくい感じがします。

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 そして 3の整音とは、ピアノの弦を直接叩いて音を出している、羊毛製のハンマーの先を針で刺して柔らかくしたり、場合によって硬化剤という薬をぬって固くしたりして、ピアノの咽と言って良い、ハンマーの状態を調整して、音色を変化させる作業を指します。

 整音がおろそかな場合、音色が固くピンピンした音だったり、モコモコした音だったり、場所によって、音色が違ったりという状態になっています。ライヴハウスのピアノは多くの場合、強くて乱暴な打鍵のせいで、ハンマーの先端が固くなり過ぎており、本来柔らかい羊毛製の部分が、めが詰まってしまい、かなりの固さになっているので、ふくよかな音がせず、固くてうるさい音になってしまっています。

 通常は調律というと、1の調律だけを指すのですが、ピアノ技術の世界では調律、整調、整音の三つの作業をあわせて総合調律と言います。 別の言い方をすれば、この三つの作業をしっかりやってはじめて、ピアノのちゃんとした状態がたもたれる、、ということができるのですが、通常はほとんどの場合、1の調律だけの作業しか行っていません。

  というか、整調、整音を節目節目にしっかりやっておけば、普段は調律だけで、メンテの作業は完了する、ということなのですが、ライヴハウスにある多くのピアノが中古で、整調、整音の状況が最初からあまり良く無い状態で購入されているので、その辺が大きな問題になっています。

 そもそも、中古を扱う業者には、整調や整音をちゃんと行える技術者がおらず、ほとんどの場合、外側を磨いたり、塗装をやり直すなどの外装だけをきれいにして、中身はほとんどナンにもせずに販売しているということが多いのです。この辺も中古車販売の業者と似ているところもありますね。

 「調律と調律師について」という題名で書きはじめましたが、ほとんど調律の話で終わってしまいました。次回は調律師の事について深入りして書いてみたいと思います。

 ピアノと調律師、そしてピアノの演奏者について その 3に続く(多分年明けになります)。

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 CMSレコード主宰ピアニスト細川正彦が、小濱安浩クインテットと池田-小濱クインテットのメンバーとして中京地区三カ所(岐阜県、三重県、名古屋府)で演奏します。新進トロンボーンプレーヤー坂本菜々さんも参加します。

12.27.sun
 ISLAND CAFE お問合せ:TEL. 058-213-7505
岐阜市一日市場北町3-7
小濱安浩クインテット
小濱安浩(ts)・坂本菜々(tb)・細川正彦(pf)・島田剛(b)・倉田大輔(ds)
12.28.mon
 Salaam お問合せ:TEL/FAX 059-326-7568
三重県四日市市智積町3191-3
池田-小濱クインテット+坂本菜々
池田篤(as)・小濱安浩(ts)・細川正彦(pf)・島田剛(b)・倉田大輔(ds)+坂本菜々(tb)
12.29.tue
 Mr.Kenny's お問合せ:TEL. 052-881-1555
名古屋市中区金山5丁目1-5 満ビル2F
池田-小濱クインテット+坂本菜々
池田篤(as)・小濱安浩(ts)・細川正彦(pf)・島田剛(b)・倉田大輔(ds)+坂本菜々(tb)


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2015年12月02日

 ピアノと調律師、そしてピアノの演奏者について その1

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 みなさんこんにちは、CMSレコードを主宰しております、プロデューサーでピアノ演奏者の細川正彦です。

 前々から思うところがありまして、ピアノと調律などのことについて、書きたい、と思っておりましたので、このCMSレコードホームページ内にあるブログ「そぼろ」に月に何度か、連載という形で、投稿することに致しました。音楽の表現に使うピアノについて、より良い状態で演奏し、音楽を聴く方達に演奏者のメッセージをより良く伝えるためにはピアノをどのように扱ったらよいのか、ピアノという楽器と、どのようにつきあって行けば良いかについて、文章を書いてみたいと思います。

 『ピアノとピアニスト』 

 ピアノという楽器をご存知無い、という方はほぼ間違いなくこのブログを読んでいらっしゃる方には、いらっしゃらないと思いますが、演奏の現場、特にジャズのライヴハウスなどに置いてあるピアノや、そのメインテナンスについて、そして、ピアノを弾く方、ピアノがおいてるライヴハウスの方達に、もう少しピアノについて詳しくなって頂きたい、と思い、この文章を書くことにしました。
 ここで、ピアノを弾かない方達は、「ピアノを弾く人が、ピアノに一番詳しいんじゃないの?、、」と疑問に思う人が多いと思うのですが、他の楽器を演奏する人に比べ、ピアニストは意外とピアノの演奏技術以外のことには、無頓着なひとが多いんです。

 他の楽器、特にギターとか、管楽器などの場合、超初心者以外の演奏者は普段のメインテナンスは、ほとんどの場合自分ですることが多いと思うのですが、ピアニストの場合、ほとんどが調律師まかせです。その上、他の楽器の演奏者とちがって、仕事で演奏する楽器は、ほぼ100%自分の楽器ではない、という環境にあります。
 かなり有名なピアニストでも、自分のピアノを持ち歩いている、、という人はほとんどいません。お金がかかって、出来る訳もありませんが、、。

 ギターの場合自分で弦を替えたり、場合によっては自分でピックアップを交換したり(リペアーマンに頼むこともありますが)、様々なアンプを試してみたり、サックスの場合、リードをはじめマウスピース、リガチャー(リードをおさえる金具)などを交換して、いろいろな音の響きを試すなど、楽器から出る音を、どうにかして良くしたい、もしくはなんとかしたい、、という欲求というか探究心があり、それが、楽しみであると同時に悩みでもある、、わけです。 ピアノ以外の楽器を演奏する人は積極的に楽器の状態に興味をもち、自分で楽器を扱うことがあるのに対して、ピアノの演奏者はほとんど何もしない(できない)ことが多いということが言えると思います。


 ピアノの演奏者の場合、行く先々で、あまり馴染みの無い楽器を使って自分の音楽を表現しなければならない、というか、悪い言い方をすれば、知らない楽器をあてがわれる、、ということになるのですね。 他の楽器の人に、「今度からライブハウスは自分の楽器は持ち込み禁止になったので、お店にある楽器で演奏して下さい、、」なんてことを言ったら、卒倒してしまうかもしれませんが、それがピアニストの毎日なのです。

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 「自分の楽器を運ばないでも仕事になるのだから、そんな楽なことはないじゃないですか、、」ということを言うひともいますが、確かにそうとも言えますが、、。
 この文章では普段あまり知られていないこと、言いたくても誰も言わないことを書きたくて書いているので、書きますが、正直言って、ほとんどのピアニストがわざと無関心で居る、、あるいは無関心の振りをしている、、ということが多いです。

 お店に出入りしている以上は、なんというか、出入りの業者なわけで、お店においてある楽器を、やれ、「弾きにくい」、とか、「傷んでいる」とか、そういうことは、なかなか言えない、、、というか、言ってはイケナイと思っているわけなんですね。もちろん礼儀として、それはある程度「あり」なわけですが、お店の人はほとんどの場合ピアノは弾きませんし、演奏する人と調律師だけが、ピアノの状態をある程度把握しているというわけなのですが、その演奏者がピアノに物申さなければ、そのピアノはほぼ、ほったらかしの状態になってしまいます。

 あともう一つ言えることは、ピアニストは、いちいち細かいピアノの状態を気にしていては、仕事にならない、、ということもあります。
 無意識のうちに、どんなピアノでも気にしないで演奏するクセがついている、、というか、無意識のうちに鈍感になっている、もしくは「わざと」、そうしている、というところもあります。 「今日はどこで演奏だっけ?、、、ああ、あそこか、、あそこの楽器は傷んでいて、弾きにくいんだよな、、」なんていうことを、朝から気にしていたら、精神衛生上、非常によろしく無いということで、考えない様にしている、、というところもあります。かく言う私は、そう言うことが気になり精神的にも良く無い状態になり、病院にこそいきませんでしたが、仕事でピアノを演奏することを一度はやめた、という経歴をもっています。

 極端な話を書けば、自分の家のピアノをもうかなり長い間調律していない、、という演奏者もいますし、住宅事情の関係で、グランドピアノはおろか、アップライトもなく、電気ピアノしか部屋に置いていないという職業ピアニストは、都会住まいの演奏者では珍しくない、というのが残念ながら現実です。
 ピアノを演奏する様な仕事は、都会に行かなければなかなかありませんが、都会に行けば行く程、住宅事情は厳しくなり、普通の家賃では、とても生のピアノを置ける環境はつくれない、というのが現実です。
 
 ライヴハウスに来たときだけ、グランドピアノに触れる、という演奏者はすくなくありません。
 
 あるライヴハウスで、グランドピアノを入れ替えた時に、演奏者にそれを伝えずに、本番前の試し弾きをしているときに「ピアノはどうですか?」と尋ねたところ、「ハイ、いつも通り弾き易いです、ありがとうございます、」と答えたので、「楽器が変わったのですが、気付きませんか?」と伝えたら、「あ〜そうなんですか、全然気付きませんでした」という会話があったという話をきいたのですが、その替えたピアノは、まえと全然違う大きさのグランドピアノだったのですが、この話は意外とピアニストがピアノに無頓着だ、ということの典型的な話の例だと思います。

 サイズの違うピアノでも、見かけ、特に鍵盤とそのまわりのサイズは、ほぼ同じなので、気がつかないということは、全く考えられないというわけではありませんが、そもそも楽器が替わっているので、音がいつもと全く違うはずなのですが、上に書いた様に、「無意識のうちに、どんなピアノでも気にしないで演奏するクセがついている」というところは、職業ピアニストの「悲しい性」というところがあるのかもしれません。

ピアノと調律師、そしてピアノの演奏者について その2につづく。

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