2013年05月09日

バッハもいーけど、ルートビッヒもね、、!

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 4月5日、14日とピアニストのグールドの話を書きましたが、きょうもグールドネタ。

 グールドという人はクラッシック界では珍しく、音楽活動を途中から、コンサートをやらず、レコーディングのみに、しぼってしまった演奏家です。

 一時いまから10年以上前、かなりグールドに凝り、アルバムも50枚以上買いまくり、半年くらい聴きまくったので、若干中毒というか食傷してしまい、最近はあまり聴いていなかったのですが、どういう訳か、今年の春先からまた、思い出した様に、グールドのアルバムを聴く様になりました。 
 
 きょうは昨年再編集されて発表された、グレン・グールド生誕80年・没後30年アニヴァーサリーのシリーズから、先日のベート−ベンの協奏曲に引き続き、主に変奏曲とバガテルばかり集めて2枚のCDにまとめたアルバムを、またまた中古で購入、、。
 わずか800円あまり(新品でも1500円)、、なので、ケースも小さいし、CD一枚なのかと思っていたら、2枚組でした (^_^;) 。

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 ベートーヴェンのピアノのバガテルや変奏曲はソナタに比べると知名度があまり無く、演奏や録音の機会も少ない様ですよね。

 私がグールドの事を書くとき、必ず私が書く事は、バッハの演奏ばかり有名ですが、他の作曲家の作品もたくさん録音していて、それらの演奏もとても素晴らしいということです。
 
 かれはベートーヴェンのソナタもたくさん録音していますが、コンチェルトも5つ全て、きょう取り上げた変奏曲とバガテルも比較的珍しい曲を演奏していますが、なぜか一番有名な、ディアベリ変奏曲は録音していません。
 きょうのブログのタイトルの「バッハもいーけど、ルートビッヒもね、、!」は、もっとグールドのベートーヴェンの演奏を聴きましょう!ということで、お正月のカレーのコマーシャルのコピーをパロディーにしてみたわけです。

 グールドというひとは、私が思うに、その時のやる気が演奏にハッキリ出る人で、今日取り上げたアルバムでは、終止テンションの高い演奏をしてくれています。グールドにはめずらしく、細かなミスや、少しおぼつかないパッセージもありますが、きっと気分良く演奏できたのか、よし、としている様です。
 録音も60年代後半から70年代にかけてで、とてもクリアーな音質で、グールドの演奏をより良いクオリティーで伝えてくれています。

Beethoven:
Variations (32) on an Original Theme in C minor, WoO 80
Eroica Variations, Op. 35
Variations (6) for Piano on an Original Theme in F major, Op. 34
Bagatelles (7), Op. 33
Bagatelles (6), Op. 126
Piano Sonata No. 24 in F sharp major, Op. 78
Glenn Gould (piano)

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2013年04月14日

影の写真とグールド

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今日は少し暖かかったですね。

花粉とか、PMナントカは、少しは減ったのでしょうか。

 最近はもっぱら影の写真に凝っていますね。この写真、いつでも撮れる様で、この角度でこの様な感じに、太陽が影をつくることは、そんなにありません。

 ここのところ、いろいろ仕事以外でも音楽を聞いています。

 
 先日買った中古CDのグールド。あれを聞いてから、すこしづつ他のグールドのアルバムもきいています。自宅とは離れた場所に置いてあったグールドのCD50枚くらいを、仕事のついでに行って、持って来ました。

 グールドは、かつて、とにかくたくさん聞きました。今から十数年前、仕事以外では、半年以上グールドしか聞かなかったことがあります。ここ数日聞いていたグールドは、コンチェルトなどが多く、一番多いピアノのソロをほとんど聞いていませんでした。

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 そして今日久しぶりに聞いたのは、バッハの「イギリス組曲第4番」。先日書いた「グールドの秘密」というブログに書いた様に、何回も録り直しているのではないかと思い、ブックレットをよく見てみました。
 そのデータが下のもの。

( Recording : Eaton's Auditorium、Toronto, Canada,
December 14 & 15, 1974, May 23 & 24, 1976 )
 
 やっぱりやっていましたね、、。
 
 20分 7楽章のこの曲を、4日間もかけていました。しかも最初の2日と後の2日は一年以上あいています。その甲斐あってか、演奏はとても緻密かつ、ダイナミックで、私はグールドの録音の中でも、かなり好きな方です。
 録音の音質も独特のクリアーさがあり、すがすがしく、今の季節にぴったりな気がします。録音は12月と3月なんですけどね(^_^;)。

 本来ピアノの為に書かれていない曲(バッハのこの時代まだピアノは発明されていませんでしたので、チェンバロ用)を見事に魅力あるピアノの曲として演奏しています。ピアノに関しては、高音部の独特のハスキーな感じが、スタンウエイ独特の魅力を感じます。

 
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2013年04月05日

ベートーベンのコンチェルト

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 先日とても期待して購入した、ブーレーズ cond、内田光子 p、テツラフ vlnのベルクのアルバムが、それ程面白く感じなかったので、少なからず落胆しました(いまめげずに聞き込み中ですが)。
 
 購入して、まるで子供の様に、悦び勇んで、CDをプレイする瞬間は、とてもエキサイティングですが、内容に不満があると、勝手なもので、子供から、すぐ大人にもどって、気難しくなります。人間て、おかしな物ですね、、。

 そんなわけで、実は最近また購入した、廉価な中古CD、あまり期待せず、軽く一週間放置しておりました。中古といっても、これはリリースされてまだ一年もたっていません。
 以前から出ていた音源CD3枚分をセットにしたもの。グレン・グールドの若かれし頃(1958〜66)の演奏で、ベートーベンのピアノコンチェルト1〜5番。
 
 5曲、CD3枚分が定価1500円くらいのものを、中古で800円くらい、、デフレ値段ですな〜、、。これなら一杯飲むのをガマンすれば買えます、、のみ屋さんを経営しているみなさん、ゴメンナサイm(_ _)m。
 
 やっと一枚目を聴いてみて、、、これは結構面白かったです。一枚目にはNo.1と4のコンチェルトが入っているのですが、ナンと、一番のハ長調 op.15は一楽章と三楽章のカデンッアをグールド自身が、作曲しています。

 これは知らなかったですね、、。生前彼は、30を過ぎたら「ピアニストを引退して作曲家になる」という発言をしていましたが、実際にはピアニストを続けながら、数曲の作品を残しただけでした。
 
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 一楽章のカデンッアは少しフーガ風、なかなか複雑なものです。ピアニストが余儀で作った物とはちがう、りっぱなものです。
 
 三楽章のカデンッアはベートーベンの後期ピアノソナタ風で、短いながらも印象的で、二つともベートーベンのオリジナルと比べても遜色のあるものではありません。
 しかしこの一番のコンチェルトの一楽章ははテンポが速いです。私が聞き慣れているベネディッティミケランジェリの、やや標準よりゆっくりした演奏の、倍近いスピードです。
 
 今日、ある脳科学者の人が、人間の脳は「知らないもの、初めて出会う物に触れると、より多くのドーパミン(快感物質)が分泌される」と、ある雑誌に書いているのを見ましたが、このグールドのカデンッアは私の脳みそに良い刺激を与えてくれましたね、、。  ピアノの調律は結構くるっていて、気にならなくも無いですが、演奏はいきいきしていて、楽しめますね。
 他の二枚を聴くのが楽しみです。

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2013年03月18日

グールドの秘密、、? 3

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 一昨日のブログで、グールドのコンサートの、ゴルードベルグ変奏曲の録音について、彼の実像に迫る上で、重要な意味があると書きました。
 その意味とは、つまり、彼が、コンサートでは絶対にできない表現方法=録音技術(編集など)を駆使して作品をつくっていたわけで、一曲丸々、途切れる事無く演奏して、それが記録として残っていて、それを聴く事ができること自体が、とても珍しい事だと言えるわけです。
 当時はそのコンサートに来ている聴衆も含めて、やがて彼のコンサートでの生演奏が聴けなくなる、なんて言う事は想像もしていなかったでしょうが、クラシック演奏家としては、異例の暴挙(?)を実行してしまったわけです。
 
 ただ実像に迫ると言っても、「録音が全てである」、として公開演奏を拒否してしまった音楽家ですから、ある意味そこに実像があるわけで、彼自身にとっては、それらの記録は実像ではなく、ただの実演以上ではなかったのかもしれません。

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 録音における編集作業を「邪道」とみる、実演至上主義の演奏家や、聴衆も確かに存在していて、編集無しの録音に、尊い魅力を感じる方も居る様です。ですが、私は録音技術者としての仕事柄として、だけでなく、実演の魅力以上に、音楽を録音し、それが最終的に商品になるまでに、色々な行程を経る事に関して、特に違和感を感じてはいません。
 むしろ、いろいろな行程を経て、つくられる事により、地球上の、いろいろな場所やシチェーション、時間や季節、その他の条件に左右される事無く、素晴らしい曲や、演奏家のパフォーマンスをより良い状態で、楽しめるとしたら、歓迎されるべきことだと思っています。

 いずれにしても、編集なしの、生の演奏そのままのパフォーマンスを、1959年のゴールドベルク変奏曲の録音からは聴く事ができるわけで、今となっては、とても貴重な記録であり、グレン・グールドの『実演』を知ることができる、数少ない音源と言えるでしょう。
 
 バッハの曲で、半音階的幻想曲とフーガ ニ短調, BWV903という曲があるのですが、グールド氏は前半の幻想曲だけ録音して、フーガを録音する事無く、亡くなってしまいました。私の大好きな曲なので、フーガを録音してから、天国に行ってほしかったです。
 半音階的幻想曲とフーガ ニ短調とCDの外側にかいてあったので、購入したら、中のブックレットに「フーガは収録されていません」なんて書いてありましたが、ソニーレコードさん、詐欺的商法ですヨ、、、(._.)...。

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2013年03月17日

グールドの秘密、、? 2

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 グールドは32歳を過ぎてから、コンサート活動を止めて、スタジオで録音した演奏をアルバムにすることが、彼の唯一の音楽活動になっていたわけですが、それに際して、彼はレコード会社と話し合って、いつでも自由に録音出来る、彼専用のスタジオを準備してもらっていたらしいです。
 その時すでに若くしてスタープレーヤーになっていたとはいえ、それは他の多くの演奏家達には望むべくも、けしてかなえられる環境ではなかったはずです。
 
 録音に専念するようになってからのグールドのアルバムの録音データを注意してみてみると、ある事に気付きます。
それは録音の年月日がばらばらというか、曲によって、楽章ごとに順番に録音する事をしなかったり、短い曲でも何日にもわたって録音していること。それから一つの曲集でもその組曲の作品番号によって、全然違う日に録音されています。
 平均律クラヴィーア曲集では、一曲のなかで、プレリュードとフーガを全く別の日に録音している曲も、沢山あります。

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 平均律クラヴィーア曲集に関しては、他のピアニストの場合、1、2巻あわせても3~5日位で、全曲を録音していることが多い様で、非常に忙しい作業になります。しかしこれは予算やスケジュールの制約から、致し方ないことで、これが慣例的に行われているわけです。
 
 それに対してグールドは、言ってみれば好きな時に、好きなだけ、録音する事ができたわけで、非常に恵まれていたと言う他ありません。
1963-03-hank-parker-owned-by-sony-music-02.png あの複雑なフーガを十分に吟味しながら、少しづつ録音できたら、本当に楽ですし、自分のベストパフォーマンスを記録できるに違いありません。そのうえグールドは、その吟味して録音した音源に飽き足らず、沢山のテイクを長時間かけて編集していたらしいです (^_^;) 。
 最初は技術者に任せていた作業を、最終的に自分でテープにはさみを入れ、行っていたようで、あるインタビューで、「本当は編集違いで、同じ曲のアルバムを何種類か出したい」なんていう発言もしています。
 
 グールドの場合、ミスを隠す為の編集ではなく、音楽的な方向性を考えての、色々なテイクの結合を行っていたとは思うのですが、緻密で、一本筋のとおった彼の音楽が、沢山の録音テイクや、編集の賜物であったことは間違いないようです。

 現代のハイエンドの制作現場においては、クラシック音楽でも、ほぼ当たり前になっている音源の編集ですが、まだそれが頻繁に行われていなかった頃から、より良い作品作りの為に、積極的にグールド氏はそれを行っていたということです。
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2013年03月16日

グールドの秘密、、?

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 このブログも気がつけば4ヶ月目に入りました。いつも読んでいただきまして有難うございますm(_ _)m 。

 4ヶ月以上毎日更新して、ネタには随分困っていますが、意外にも、カテゴリーをつくった割には、まだ一回しか取り上げていない、Glenn Gouldの事を書きたいと思います。

 前回は、グールドといえば、いつもバッハとともに話が進められる事がおおいので、あえて違う内容にしましたが、今日は素直に彼の演奏したバッハのお話です ^^; 。
 バッハが鍵盤楽器(チェンバロ)の為に作曲した作品のほとんどを録音しているグールドですが、彼が演奏したバッハといえば、一番有名なのは、ゴールドベルク変奏曲ですよね、、。デビューしたばかりの1955年の録音と、50年の短い人生を終える少し前に、録音した演奏と、二つのアルバムがあることは有名ですが、実はもう一つの録音があるんです。
 
 それは1959年のザルツブルグの音楽祭での、コンサートでのライヴ録音なんです。私は随分前に、そのCDを手に入れて、愛聴していたのですが、あるとき友人に貸したきり、どこにあるかわからず行方不明になってしまいました。借りた本人も忘れてしまっている上に、私も誰に貸したか覚えていないんです、、。これを読んでいらっしゃる中にいらっしゃったら、ご一報下さい(無理かな^^;)。

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「CBSのスタジオにラーメン三つね、、一つネギ多めでオネガイします〜」と言っているかどうかは、わかりませんが、電話をするグールドの写真 (^_^;) 

 
 


 
 そのCDが戻って来ることは、もう諦めているので、新しく手に入れるべく探していたのですが、もともとボックスセットの中の一枚なので、それだけ手に入れる訳にゆかず、購入できずに寂しい思いをしていたんです。
 
 そうしたら、今日偶然に、中古CD屋さんで発見したんですよ、、、!(^o^)/ そのアルバムを!!しかも格安で。日頃の行いが良いので(ウソ(-_-;))、神様が巡り会わせてくれたんだと思います。
 グールドという人は32才から一切のコンサート活動をやめたので、音源の数が決まっていて、この様な音源はあまり無いんです。

 コンサートの演奏、しかもこの曲の様に長い曲を、続けて演奏した記録というのは、グールドの場合とても貴重なんです。それは、音源の希少性以上に、グールドという音楽家の実像に迫る上で、重大な意味があるんです。その重大な意味とは、、? 明日に続きます (・_・;) 。   CMS Records web site  http://cms-records.biz
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2013年01月11日

Glenn Gould  Mozart; Schoenberg: Piano Concertos

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 こんにちは、CMSレコード、エンジニアの小宮山です。
みなさん、グレン・グールドというピアニストをご存知でしょうか? ジャズ系の音楽をお聴きの方にも、知っている方が、いらっしゃるかもしれません、、。クラシックの世界では有名な人で、沢山のアルバムが出ています。
 この人の変わったところは、14歳から演奏活動をしているのですが、30歳の頃からコンサート活動をやめて、50歳で亡くなるまで、一切の公開演奏をせず、レコーディングに専念してしまったことです。

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 バッハの演奏で有名な人で、ほとんどの鍵盤楽器の為の曲を録音していますが、その他の作曲家の作品も、いっぱい録音しています。
とても個性的な音楽性と、演奏スタイルで、何かと話題が多い人で、彼に関する本もたくさん出ていて、評論や彼自身の著作、書簡集なんかも出ています。
 演奏家、音楽家というより、文化人、芸術家という感じで、特殊な位置にいる人物と言えるでしょう。
 
 私のまわりにもグールドファンを自認する人がいますが、意外と音楽より、評論など本を通じての知識、情報が多い人が多い気がします。中にはグールドってバッハ以外にも録音していたんですね、、、なんて言う事をいう人も居ます。
 私は仕事柄、詳しいせいもありますが、ファンならば、もう少し、音楽そのものを聴いてほしい気がします。

 ここに取り上げるのは、数年まえに初めてCD化された、モーツアルトとシェーンベルクのピアノ協奏曲で、彼が演奏活動をやめる2年前の録音です。
 
 この演奏を聴いて、私が感じるには、後の多くのスタジオ録音に比べて、調律の違いもあるかと思いますが、ピアノの音色が、明るく澄んでいて、良い意味で、グールドらしく無く、閉じた孤独な感じではなく、多少普通な (^_^;) 、外に開かれた感じの音楽を聴く事ができます。
 
 このアルバムでは、選曲のカップリングこそ、とても珍しいものですが、モーツアルトにしろ、シェーンベルクにしろ、素直な、というか、グールド独特の突飛な表現や、変わったアプローチを感じない、正統的な雰囲気の演奏をしています。
 
 シェーンベルクのコンチェルトは、あまり演奏されない曲ですが、私が知っている、ブレンデルや内田光子さんの演奏と比べても、良く練られた解釈で、技術的にも素晴らしく、指揮のWalter Susskind氏の裁量もあるのでしょう、とても説得力のある演奏になっています。

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Glenn Gould; Walter Susskind: CBC Symphony Orchestra 

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