2013年09月03日

昨日のブログ ピアソラですが、、

3-1.jpg


 8月20日以来のクレーメルネタ。

 いろいろな曲を演奏する、クレーメルですが、アストル・ピアソラの曲を演奏しているのは有名ですよね、、。実質的にはクラシック界のピアソラブームの火付け役として、イノベーター的な存在になったというわけです。ピアソラはタンゴのバンドネオン奏者、バンドリーダーとして活動していた人ですが、いわゆるタンゴの曲以外にも、いろいろなスコアを残している作曲家でもあります。
 
 実はクレーメル以前にも、たくさんの人がピアソラの曲を演奏したり、録音しているんです。それは、曲が素晴らしいと同時に、しっかりとした楽譜、クラシックの演奏家が、それを見て演奏すれば、一応ちゃんとした音楽になるような楽譜が出版されているんですね、、。これは、一般的なクラシック意外の音楽が、ほとんど楽譜らしい楽譜が少ない、つまりジャズとか、ロックとかは、コードネームとリズム譜とか、その音楽を何回も聴いて、よく知っていなければ演奏できないような楽譜がほとんどなのに対して、ピアソラの曲はちゃんとした楽譜がたくさん出ているんです。
 これは、ピアソラ自身が、クラシックの作曲を勉強しながら演奏活動もしていて、新しい音楽、自分の音楽を創り出すことに、シリアスに取り組んでいたことの痕跡でもあるわけで、本人の筆による、楽譜が出版されているわけなんだと、思います。

3-2.jpg


 そんなわけで、ピアソラの音楽のファンであったクレーメルが、これを自分で演奏しようと思ったのは、ある程度自然のながれだったのかもしれません。でも私がはじめて、クレーメルの「ピアソラへのオマージュ」を聴いたときの感想は複雑でした。
 私はべつにクラシックの演奏家のクレーメルが、タンゴの曲をやったのが、「イヤだ」、と言う程の保守的なクラシックファン、あるいは、そのようなクレーメルのファンでは決してないのですが、あらゆる曲を自分の物にして、いきいきと演奏するクレーメルにしては、あの演奏は、ハッキリ言ってぎこちなかった。
 
 素晴らしいメンバーということで、かなり期待して買ったアルバムでしたが、綺麗な音色、優秀な録音、、の割りには、音楽の流れが悪い演奏。最初は別に、それほどタンゴを意識していない、独自の解釈なのかとも、思いましたが、何度聴いても釈然としない、、(~_~) 。そのうちにほとんど聴かなくなってしまいましたし、クレーメルのピアソラを録音したディスクは、一時、買わなくなりました。

 ちまたでは、その様なクレーメル批判は、私の知る限り、ありませんが、当時の段階では、巨匠クレーメルがピアソラを演奏、という話題が先行して音楽的な評価は後回しになっていたような気がします。アマゾンのレヴューをみても、私の様な感想を書いているひとはおらず、「何だかな〜」と言う感じです。

3-3.jpg

 
 極端な言い方をすれば、「モスクワ音楽院の優秀な学生が演奏しているような」ピアソラの演奏といっても良い感じの味わいの演奏だと私は思います。
 
 クレーメル氏の名誉の為に言いますが、その後随分経ってから購入した、ピアソラの曲の他のディスクは、時期を追うにつれ、上達していて、クレーメルが、どんどんタンゴをモノにしていく過程がよくわかります。1998年にだした「ブエノスアイレスのマリア 」あたりまで来ると(ピアソラへのオマージュは96年発表)わずかな期間にかなり進歩しているのがわかります。
 
 おそらくかなり勉強したのでしょう、ほとんど専門家であるかのような、こなれた演奏になっています。
それらを聴くに付け、最初のアルバムは独自の解釈などではなく、ピアソラ初心者の演奏であったということを感じます。良くいえば上品な演奏、でも私にはアレを聞くなら、普通にクラシックを演奏しているCDをききますね、、、(^_^;)。

 ちなみに他のクレーメルのピアソラのディスクは愛聴していますよ、、、もちろん ( ^ ^ )/ 。

41KxGwSROjL._AA200_.jpg Gidon Kremer, violin (1-11)
Vadim Sakharov, piano (1, 3, 6-11)
Alois Posch, double bass (1-3, 6-10)
Michel Portal, clarinet (2, 9)
Per Arne Glorvigen, bandoneón (2, 3, 5-10)
Friedrich Lips, bajan (4)
Svjatoslav Lips, piano (4)
Vladimir Tonkha, violoncello (4)
Mark Pekarsky, percussion (4)
Paul Meyer, clarinet (6)
Elisabeth Chojnacka, harpsichord (8)

PRODUCTION CREDITS
Produced and engineered by Peter Laenger, Tritonus Musikproduktion, Stuttgart
Recorded July 1995 at Castle, Lockenhaus, and January 1996 at Studio Guillaume Tell, Paris
Assistant Engineer: Marcus Heiland

CMS Records web site  http://cms-records.biz
posted by えんこみ at 15:17| Comment(1) | TrackBack(0) | Gidon Kremer

2013年08月20日

クレーメルのパガニーニ

20-2.jpg


 一日おいて、またまたクレーメルの話です。

 クレーメルのアルバムを詰め込んである箱をあさっていたら、ちょっとかわったアルバムが出て来ました。シベリウスとパガニーニと、バッハのヴァイオリンコンチェルト、、。パガニーニは一番、バッハも一番のコンチェルトです。これはオムニバス(寄せ集め?)のアルバムなんでしょうか?ちょっとわからないんです。
 
 一応録音時期は同じ頃、1977~8年なんですが、探してみると同じ時期の若干曲の違う組み合わせのアルバムが他にもありました。シベリウスとシュニトケのコンチェルト・グロッソ(合唱協奏曲)というのが、2枚。一つは日本のコロンビア、もう一つはアメリカのBMGビクターこれは両方とも全く同じ音源です。別にクレーメルのコンプリートコレクションを目指しているわけではないのですが、私もいろいろ持っているものだなと、、(^_^;) 。

 そんでもってこのアルバムの変なところは、指揮者とオーケストラもいろいろというか、別の組み合わせで収録されています。シベリウスとバッハは、指揮がロシアの名匠ロジェストベンスキー、、とくればレニンがラードフィルかと思いきや、ロンドン交響楽団で、パガニーニの方は、ハインツ・ヴァルベルク指揮のヴイーン交響楽団(ヴイーン・フィルではなく、ヴィーン・シンフォニカーの方です)。しかもロシアの指揮者、ロジェストベンスキーがロンドン交響楽団と演奏して録音しているのは、オーストリアのヴイーンのホールです。

20-1.jpg


 ここで私が今日書きたいのは、パガニーニのコンチェルト。ウイルへルミ(August Wilhelmi 1845~1908)という人が編曲した版を使用して録音しています。ウイルへルミという人はバッハのG線上のアリアの編曲で有名な名バイオリニストなのですが、この人はパガニーニの3楽章ある原曲のコンチェルトをナンと一楽章のみにバッサリ短くしてしまっているんですよ、、。

 私パガニーニに関しては全然詳しくないのですが、あまり1番のコンチェルトの出来は後世の音楽関係者に評判が良くないらしく、いろいろな人が編曲し、演奏したり出版しているらしいのですが、クライスラーとともに、このウイルへルミさんは2、3楽章を除去、つまり無くしてしまって一楽章として完結させています(それでも演奏時間は20分弱ありますが、、)。
 パガニーニにしてみれば、せっかく作った2、3楽章を無き物にされて、ちょっと、いや、かなり悔しい事でしょう。以前私はイタリアのヴァイオリニスト、サルバトーレ・アッカルドのパガニーニの協奏曲全集を購入しようかと思って、止めましたが、原曲を知っていれば、この曲をより面白く聞けたのかもしれません。
 
 クレーメルはパガニーニコンクールで「優勝」という経歴を持っていますが、パガニーニの曲はあまり録音していなくて、この1番の協奏曲以外では、4番の協奏曲と、ソナタ・バルサビアという協奏曲形式の変奏曲(ムーティーとヴイーンフィルの組み合わせ)くらいしか、私の知る限り録音していません。あとは小品集で、カプリースから何曲かだけ、でしょうか、、?。でもパガニーニの伝記映画にパガニーニ役で主演していたりして、パガニーニが嫌いと言う訳ではなさそうですが、、、。

20-3.jpg


51hmryH-iuL._AA160_.jpg Enginner Horst Lindner VDT
Produce Hans Richard Stracke (Siberius) Oskar Waldeck(Paganini) 

 親愛なるクレーメル氏が、あえて、一楽章のみの、ウイルへルミの編曲を選んで演奏、録音しているのですから、これがベストな彼のパガニーニの「1番のコンチェルト観」なのかもしれません。原曲を知らないので、何とも言えないのですが、カデンッアなどは、後の作曲家たちが、参考にしたであろう、派手なパッセージが沢山出て来ます。オーケストラの編曲も、管楽器を増強したりして工夫してあるらしく、一楽章ながら、手応えのあるつくりには、なっています。
 
 久しぶりに一緒に収録されているシベリウスのコンチェルトを聞きましたが、やっぱりこの曲は大好きです。
 
 なぜか家に帰って来た様な感じがします。クレーメルも「シベリウスの協奏曲が一番好き」とインタビューで言っていますが、一時数年間、この曲を、北ドイツ放送響、エッシェンバッハの組み合わせで、世界各地で演奏していたので、新しいアルバムが出ると思っていたのですが、今のところは出ていないみたいですね、、。

 クレーメルのネタは、ついつい文章が長くなります、、 それではこの辺で、、(^_^;) 。

CMS Records web site  http://cms-records.biz
posted by えんこみ at 23:17| Comment(0) | TrackBack(0) | Gidon Kremer

2013年08月18日

George Enescu  Octet, opus 7, Quintet, opus 29

18-1.jpg


 今日は久しぶりのクレーメルの話、といっても、今日の話の主役はエネスコという作曲家です。

 1955年まで生きていた、ルーマニア出身の作曲家ですが、主にバイオリンの名手として、歴史的には知られています。ギドン・クレーメル氏は、ブラームスのヴァイオリン協奏曲のカデンツを3回目の録音で、エネスコ作のものを使用しています。

 エネスコという名は、フランス語読みで、本国ではどちらかと言うと、エネスクというのが、正しい様ですが、日本では一般には「エネスコ」の名の方が通っているので、今日はエネスコで書きます。
 
 音楽史の上では、クライスラーや、ティボーなどと並ぶ名バイオリニストとしての名声ばかりが有名ですが、この人が、他の名ヴァイオリニストとちがい、とても素晴らしい作曲家でもあるということを、私はクレーメル氏の録音で知る事ができました。

 弦楽8重奏、そして、ピアノ5重奏が収録されたアルバムは、ノンサッチ(ワーナー)から出ていますが、いまは国内では残念ながら手に入りにくい様です。
 
 私が10年位前にルーマニアに行き、現地で幾つかのCDを手に入れて来たのですが、それらはほとんどが小編成のものばかりで、貴重な音源とはいえ、エネスコ氏の作曲家としての全貌をとらえるには、いささか無理がありました。それでも、同じルーマニア出身の夭逝したピアニスト、リパッティーが演奏する彼の曲や、エネスコ自身が演奏する、バイオリンやビオラの演奏、そして彼が演奏するピアノまで聴けるのは、とても素晴らしいことだと言えるでしょう。
 
 余談ですが、エネスコはルーマニアの国民的音楽家で、お札のキャラクターにも選ばれているほどで、バイオリンの形の「透かし」と肖像画が、高額紙幣にしっかり刻まれていました。

18-2.jpg


 いつもクレーメルの話を書くときに、彼が、あまり知られていない素晴らしい曲をたくさん録音するので、ついついCDを購入してしまう、ということを書きますが、このアルバムを改めて聴いても、一体これから録音しようとしている、知らない名曲は、どの位の数、彼のノートのリストに記入されているのだろう、、、?と想像して、ワクワクして、しまいます。

 このアルバムに収録されている二つの曲はある意味とても複雑で、弦楽合奏の入り組み方としては、究極と言って良いほどの複雑さです。

 クレーメルと、優秀な若い演奏家達の素晴らしい技量によって、その複雑さ故の難解さが、緩和され、豊かで芳醇なアンサンブルの世界を楽しむ事ができます。ジャケットの写真の様に、霧につつまれた道の先にある風景が、演奏がすすむにつれ、くっきりとした景色を表し、大きな感動を私たちに与えてくれます。近代の作品でありながらも(1900年と1940年)、少しも難解ではなく、ロマンティックな雰囲気に満ちています。

 クレーメル氏の豊かなチャレンジ精神と、作曲家への絶大な敬意がこのアルバムを作り上げたに、ちがいありません。ちなみにプロデューサーはかつて、ECMで、アイヒャーの片腕として働いていた、ロバート・ホロウイッツが務めています。

 51NP404750L._SL500_AA300_.jpg
MUSICIANS
Gidon Kremer, violin
with
Dzeraldas Bidva, violin
Ula Ulijona, viola
Marta Sudraba, cello
Andrius Zlabys, piano

Kremerata Baltica:
Gidon Kremer, solo violin and artistic director
Violin: Dzeraldas Bidva, Eva Bindere*, Migle Diksaitiene, Andrejs Golikovs, Inga Gylyte, Elo Ivask, Miroslava Kotorovych, Marija Nemanyte, Sandis Steinbergs, Andrei Valigura*, Sanita Zarina*
Viola: Janis Lielbardis*, Ula Ulijona*, Vidas Vekerotas, Zita Zemovica
Cello: Peteris Cirksis, Giedre Dirvanauskaite, Eriks Kirsfelds*, Marta Sudraba*
Bass: Danielis Rubinas

*Octet performers

PRODUCTION CREDITS
Produced by Helmut Mühle and Gidon Kremer
Edited by Gudrun Maurer

Octet, opus 7
Recorded June 2000 at Angelika-Kauffmann-Saal, Schwarzenberg, Austria
Engineer: Philipp Nedel
Assistant Engineer: Jörg Mohr
Production Coordinator: Matteo Tradardi

Quintet, opus 29
Recorded November 2001 at Probesaal der Philharmonie Rheinland-Pfalz, Ludwigshafen, Germany
Engineer: Niels Müller
Assistant Engineer: Sibylle Strobel
Production Coordinator: Sonia Simmenauer

Design by Evan Gaffney
Cover photograph: Suspended Vine, Marly, France, 1995 by Michael Kenna/Maconochie Photography

Executive Producer: Robert Hurwitz
posted by えんこみ at 21:48| Comment(0) | TrackBack(0) | Gidon Kremer

2013年07月17日

クレーメルについて、再考。

16yu.jpg17biru.jpg
 
 ほぼ一ヶ月ぶりのクレーメルネタ、、。最近いろいろな方がこのメールを見ているので、「クレーメルネタ」って何?という疑問を持つ方と、待ってました!クレーメル、、と言う人と、またクレーメルかよ〜という人の、おおよそ3種類に分かれるのではないかと思います。
 クレーメルというのは、人の名前、一応クラシックのヴァイオリンを弾く人で、ヨーロッパのバルト三国、ラトビア共和国出身の男性です。ラトビアは昔はソビエト連邦、今のロシアの一部でしたので、彼は最終的にはソ連の優秀な演奏家として、モスクワ音楽院に学ぶことになります。 クレーメルの話、このブログを初めて8ヶ月ちかくのなかで、14回取り上げていて、今日が、15回目。

 私もレーベル主宰の細川も、二人とも、このクレーメルさんの音楽が大好きです。本来ジャズ系CDレーベルのブログですから、クラッシック音楽はあまり関係無いはずなのですが、彼の活動、発言などがとても示唆に富み、演奏とともに、音楽及びに、世相について、素晴らしい洞察力に満ちている、、というところから、このブログをご覧になっている皆さんにも、少しでもクレーメル氏の事を知って頂きたいと思い、文章を書いています。

17kusa.jpg


 クラシックの世界ではいわゆるエリートで、有名なコンクールに優勝したり、何人もの有名な指揮者に認められたりと、なに不自由なく世に知られている彼ですが、一通りの名声を得たあと、その地位には安住せず、極めて独自色の強い活動をしています。
 
 それにしても日本での彼の名声は、海外でのそれに比べ低いというか、知名度にかんしては実力に反比例するかの如く低いですね、、。音楽を仕事にしている人でも、ジャンルを代表する演奏家ですから、誰でも知っている、と思いきや、意外と知らない人がいたりします。

 それは一重にあらゆる意味で、彼の独自色が強い活動が、日本のマスコミやメディアにとって、やりやすくない、方法をとっているからだと思います。レパートリー選びから、共演者選び、コンサート活動のやり方や、アルバムの制作の仕方まで、従来のクラシックの巨匠、名演奏家とは全くちがうスタンスで行っています。

 下の写真のアルバムは、彼が1900年代後半にドイツのレコード会社、テルデックから出したアルバム、「フロム・マイ・ホーム」。
生まれ育ったバルト三国、ラトビア、エストニア、リトアニアの作曲家達の作品のみを演奏しているアルバムです。全て近代の作曲家の作品ですが、いわゆる前衛的な音楽はほとんど無く、豊かなメロディーと美しいハーモニーに満ちています。

 いわゆるクラシックの名曲が収録されていないので、我が国ではなかなか手に入りにくい状況ですが、機会があれば是非聴いてみて頂きたい作品です。

From My Home.jpg







 Recoeding TELDEC Studio Berlin Apr 1996
 Producer Wolfgang Mohr
 Recording Engineer Tobias Lehmann
posted by えんこみ at 00:01| Comment(0) | TrackBack(0) | Gidon Kremer

2013年06月17日

Kremer Bach: Sonatas & Partitas For Solo Violin 3

16ajisai.jpg


 3日目になるクレーメルのバッハ無伴奏ヴァイオリンパルティータの話。普段は3種類の曲集(CDアルバム)を聴き比べる様な事はせず、一番新しい2002年のECM盤をよく聴いていました。
 今回改めて、時間の関係で、全てではないのですが、3種類の録音を聴いてみて感じた事は、どれもクレーメルの音楽としてとても強いメッセージが込められた演奏だとおもいました。この曲に限らず、彼の演奏は強い意志のもとに、強烈な個性を持って迫ってくるような表現が多いのですが、共演者がいないソロの曲なので、なおさら彼のメッセージが薄まることなく、聴く者の心に訴えかけて来る様な気がします。

  私が何故クレーメルの演奏を頻繁に聴き、たくさんのCDを手に入れたのかと言うと、音楽的な興味ももちろんありますが、それと同時に、彼の演奏を聴き、ヴァイオリンの音に身を委ねると、とても大きな安堵感というか、リラックスする感覚を得られると言う事が大きいです。
 これは正しい音楽の聞き方ではないのかもしれませんが、精神的に疲れていれば、いる程に、クレーメルの音が癒しの特効薬のように、身体に入ってきます。それは高い演奏技術によって再現された作曲家のメッセ−ジが、より私の頭に届き易くなっているのだ、と言う考えも当てはまるとは思うのですが、それだけでは決してない、何か別のスピリチュアルな感覚を得る事ができるという事は、言わざろうえません。

16kage2.jpg

 
 そういう意味でも、この文章を書きながらも3つの録音を聴いていますが、どの録音も魅力があり、もう少しで全ての録音を聞き終わってしまいそうです。
 先ほど強烈なメッセージ性のある演奏であると書きましたが、録音状態、演奏の仕方を含めて、それぞれに違う味を持っているはずの演奏なのですが、いろいろな楽章を聴いているうちに、なぜかその録音が何番目の録音かわからなくなる瞬間があります。
 その理由として考えられるのは、恐らくはバッハの音楽を演奏しながらも、クレーメルの演奏には、それを何だかの形で陵我する強い何かの意志が入っており、時代や録音場所、演奏の仕方を越えて、彼の人間そのものを感じさせる不思議なパワーの放射があるのではないかと思います。

 私の専門の録音技術の角度から3つの録音をながめてみると、いろいろな事をいうことができます。1975、1980、2002年という時代は75と80年はまだ最終メディアがLPレコードの時代に録音されていますが、2000年代に入ってからの録音のECM盤は、デジタルの熟成期に入った、最近の録音です。
 一枚目は恐らくヴァイオリンに1本のマイクとアンビエントのマイク、2、3枚目はヴァイオリンは2本マイクによるステレオ録音で記録されています。2枚目のフィリップス盤ではけっこう編集によるつなぎ目が目立ち、それが、テープ編集によるものなのか、初期のデジタル編集のせいなのかはわかりませんが(アナログで録音し、編集だけデジタルでするという事がおこなわれていた時代もあるらしいです)、ECM盤にくらべ、気をつけて聴くと、編集箇所がハッキリわかります。
 
 ECM盤もわざわざエディティング・エンジニアの名前が書いてあり、相当テイクのつぎはぎはされている様ですが、全くわかりません。そういえばECM盤は確認してみたら、昨日私が書いた様にプロデューサーにはアイヒャーの名前はなく、「Album Puroduced by ECM」と書いてありました。やはりクレーメルの持ち込み企画なのかもしれません。
 一枚目のソ連国営レーベル、メロディアの録音は、かなりクオリティーが高く、当時の西側のクオリティーを、しのいでいる素晴らしい音質です。
 
 下は昨日の福岡市内の空、梅雨はどこへ行ってしまったのでしょうか (^_^;) 。

16sorabi.jpg


CMS Records web site  http://cms-records.biz
posted by えんこみ at 00:43| Comment(0) | TrackBack(0) | Gidon Kremer

2013年06月16日

Kremer Bach: Sonatas & Partitas For Solo Violin 2

16sora.jpg

 私が手に入れたクレーメルの最初のアルバムは、実はバッハの無伴奏ヴァイオリンの最初の録音なんです(下の写真左)。そのころは、他の2枚は発表されておらず、私も若かったので、まだバッハの音楽も、無伴奏のバイオリン曲もほとんど知りませんでしたし、バッハの無伴奏バイオリン曲にはソナタ3曲とパルティータが3曲がある、、、なんて言う事も知りませんでした。
 
 でもこのクレーメル27歳の時の録音を、繰り返し聴くうちに、だんだんこの音楽が聴く程に好きになり、アナログ盤でかなりの回数聴きました。当時自分の部屋でこのアルバムを聞くと、いつの間にか寝てしまい、レコードプレーヤーの針がレコードの内側の最後まで行ってしまい、ブッッというノイズが何回も出ているのを、寝ぼけたまま、目を閉じて聞いていた記憶が今でも残っています。
 
 バッハの作品は必ず学校の音楽の時間に聞かされるので、知らない訳ではありませんでしたが、この作品ではじめてバッハの曲を自らすすんで聞いたと記憶しています。この後、短い間にアンドラーシュ・アドリアンが演奏するフルートソナタ、ヘレムート・リリンクの演奏するオルガンコラールなどを聴き、ピアノのグールドのアルバムにたどりつきました。多感な十代の私はクレーメルをきっかけに、あっという間にいろいろなバッハの作品に慣れ親しんでゆきました。

GK.TIFF


 80年録音のクレーメル2回目の録音、ソナタまで全6曲を録っているものとしては、初めての録音を聞いたのは、録音されてからかなり時間がたった1985年くらいだったと思います。たまたま友人のカメラマンの仕事場に遊びにいったとき、彼がそこにあったステレオでCDでかけてくれました。
 その時の印象は最初のアルバムと比べ、すこし荒っぽい感じがしました。そして初めて聞くパルティータではなくソナタの楽章。ヴァイオリン一台でのフーガは強烈でした。後でわかったことですが、友人のカメラマンはクラシックギターを演奏していて、セゴビア編曲のこの曲を趣味で演奏していて、クレーメルのアルバムにたどり着いたようです。

16kage.jpg


 この頃私は、クレーメルを一時的にあまり聞かなくなっていて、彼の活動に関しての情報もほとんど知りませんでした。世間では、この時期にクレーメルが亡命して西側のレコード会社(フィリップス)から作品を出したと話題になっていましたが、彼自身の著書を読むと、「亡命」という感じではなく、ソ連当局とは合意の上での西側での彼自身の意思よる活動開始である、と言う風にわたしは読みました。
 
 この作品から約20年後に3回目のバッハ無伴奏の録音にクレーメルは取り組みます。最初の盤がソ連時代、恐らくは当局の依頼に応じて録音したものでありましょう、そして2回目は初めてのバッハの6曲の無伴奏作品全集、これもレコード会社のプロデュースによるものですが、クレーメルの華々しい西側デビューのきっかけにもなった作品でしょう。
 3枚目は昨日書いた様に、ECMレーベルでの仕事ですが、プロデュースは一応ECM総統のマンフレート・アイヒャー(肩書きはエグゼクティブ・プロデューサー)ということになっていますが、実際にはそれまでにクレーメルがいろいろなレコード会社で共同作業をしてきた優秀なスタッフを集結させて、実質自身のプロデュースで作り上げた作品のようです。

 九州地方は相変わらずの空梅雨、、この夏の渇水が心配されます。明日もこの話題つづけさせてください。

16hana.jpg


CMS Records web site  http://cms-records.biz
posted by えんこみ at 12:12| Comment(0) | TrackBack(0) | Gidon Kremer

2013年06月15日

Kremer Bach: Sonatas & Partitas For Solo Violin

15ki.jpg
 

 皆さん、暑い中、如何がお過ごしですか?CMSレコードエンジニア小宮山です。
 九州は空梅雨でしたが、やっと少し雨が降りましたね (^_^;) 。このブログ、レコードレーベルのブログにも関わらず、気がついてみれば10日以上も音楽の話題なし、、という状況でしたね、、。食べものや、その他の話題(ほとんど食べ物でしたが)、、、。
 写真の方は、このところ久しぶりの電線炸裂!!ヤッパ電線ってイイですね 、、(^^)、(私だけ?)。

 やっと今日は音楽の話題、、でも私のおきに入りのヴァイオリニスト、ギドン・クレーメルの話。あ〜またクラッシックか〜俺はクラッシックはわからないんだよ、、というあなた、まあ、そうおっしゃらずにお付き合い下さい。

 クレーメルという人は本当に色々なレパートリーがあって、今までに150枚以上はアルバムを出しているのですが、非常にレアな曲を発掘して録音する一方、特定の曲を何回も録音したがる習性(?)があります。
 通常クラッシックですから、アドリブやフェイクは基本的には無しで、楽譜のとおり演奏するわけで、一つの曲を何回も録音して発表しても、セールス的には難しいはずなのですが、レコ−ド会社に出してもらえるわけですから、それなりに売れているのだと思います。
 まあ私の様なクレーメルバカもいるので、そういう人達が買ってくれるのだと思いますが、ベートーヴェンやブラームスのコンチェルトは3回もリリースされています。
 今日取り上げるバッハの無伴奏バイオリンのソナタとパルティータも、1975、80、2001〜2の3回の録音でアルバムが発表されています(正確には1975年はパルティータのみ)。

 
 年代順にジャケット写真を載せました。これは75年ソ連時代、国営のメロディアレーベルから。当時のクラッシックの演奏者としては珍しい長髪のスタイル。今は別のジャケットが使用されていますが、今回は、こちらの方が好きなので、私所有のオリジナルジャケを写真で撮りました。若くして巨匠の風格があるルックスですね、、。この頃の使用楽器はおじいさんから頂いたガダニーニらしいです。

G K Bach 3-1.jpg


 これは二枚目、ヒゲが生えて、少し山男の様な風貌のクレーメル。レーベルは西側オランダの大手、フィリップス。オリジナルのLPにはバッハ直筆の楽譜のコピーが全曲分付いていました。録音は1980年、使用楽器はストラディバリだそうです。

G K Bach 2jpg.jpg


 これは一番新しい2002年リリースのアルバム。もう十年以上前なんですね、、。元々はドイツのジャズ名門レーベルで最近はクラッシックもたくさんリリースしているECMから発表されています。このジャケは ECMにはめずらしく、バッハの直筆譜の表紙のコピーです。使用楽器は以前師匠のダヴィット・オイストラフが所有していたガルネリ。この作品はエンジニアの私の耳にはDSD収録している様に聞こえます。

G K Bach 3.jpg


 これらのアルバム以外にも、コンサートの録音や、海賊版のような音源で、それぞれの曲の一楽章のみの音源など、様々な録音がありますが、この3枚の録音について、明日もいろいろ書いてみたいと思います。

CMS Records web site  http://cms-records.biz

15kumoku.jpg

posted by えんこみ at 14:01| Comment(0) | TrackBack(0) | Gidon Kremer

2013年05月19日

こんなんもあります、クレーメルのアルバム 2

19yuuhi .jpg

 このブログ、いつも読んで下さっている方のなかには、クラシックは「ワカラン」、「知らん」と言う方結構いらっしゃるかもしれません。
「クレーメル、、?またその話題か〜、、」と思っている方々、、まあそうおっしゃらずに読んでください。
 「クラシック音楽は上品な感じで難しい、近寄りがたい、音楽が複雑でよくわからん」、これは一般的に言われてる事で、私これをあえて否定するつもりはないんです。っていうか、そうなんですよ、クラシックと呼ばれている音楽は、ヨーロッパの伝統音楽で、我々日本人には異国のものですし、、理解しにくいものなんです。
 
 よくジャズやクラシックを、それを聴かない人に聴いてもらう為に「全然ムズカシく無い、楽しい音楽です、、♡ (^o^)/」なんていう解説をする人がいますが、あれは「ウソ」ですよね、、。「嘘」はいけません。ウソをついて人を説得するのは、あまり良い方法ではないと思うのです、私は。

 音楽にしろ、小説にしろ、絵画にしろ、映画にしろ、それなりの成り立ち(歴史的な)や、作者の様々な工夫がある作品には、それなりの入り組んだ仕組みや、難解なところがあって、それを理解したり、どこか感じるところがあれば、段々と面白みが解ってくることもあると思うんです。
 それらは、感性の問題だけではなく、人それぞれの知識や教養(この言葉自体嘘くさくて好きではありませんが、、)の深さに応じた、理解の仕方があると思うんです。ですから、その理解する下地みたいなものをあまり持っていない人に、「全然難しく無いので」というのは不親切ではないかと、、。

20yama2.jpg


 今日ご紹介するのはイギリスの作曲家ベンジャミン・ブリテン(1913~1976)の作品集。

 この作曲家、一般には「青少年の為の管弦楽入門」という曲で有名で、小学校の音楽の時間に聴いた事もある方もいらっしゃるでしょう。私の最初の印象は普通のクラシックの曲、、?。特に面白かったという感じはない作曲家でした。それもそのはずで、あの曲はバロック時代のコンポーザー、パーセルの主題にもとづいた変奏曲とフーガで、いろいろな楽器を紹介しながら、曲が進んで行く入門者向けの曲だったのです。
 印象が変わったのは、チェロのムスティスラフ・ロストロポービッチとシューマンやドビュッシー、自作のソナタを演奏しているアルバムを聴いたときでした。彼が演奏家としても活動していた事は知りませんでしたし、初めてブリテンらしい曲を聴いての印象は、ピアノの腕の素晴らしさもさることながら、とてもモダンでありながら、前衛的でないにも関わらず、クリエイティヴな作風をもっていたということです。イメージが広がる感じ、大きく広がる様な世界を持った曲を作る人なのだと、ハッキリわかりました。あまり派手ではない作風が評論やジャーナリズムの世界では今ひとつインパクトに欠ける扱いになってしまったのだと思いますが、再評価されても良い素晴らしい作曲家だと思います。

 そのブリテンの曲をクレーメルが演奏している事を知ったとき、これは聴かなくてはと思ったのです。このアルバムに入っているvlnとvlaのダブルコンチェルトはこのCDが世界初録音で、イギリスのブリテン財団も制作に関わっています。
 ヴィオラのバシュメットとクレーメルはソ連時代からの友人で、いろいろなプロジェクトで共演しています。バシュメットが指揮、クレーメルがソロで、いろいろなコンチェルトの録音もあるんですよ。このアルバムで指揮している日系のケント・ナガノもクレーメルとは近代の曲をメインにいろいろ録音しています。

 一曲目で演奏しているピアニスト、ルガンスキーもロシア系の人ですが、ロシア系の演奏家の現代音楽に対する意欲とすばらしい洞察力には目をみはるものがありますね。

 このアルバムの演奏は、とにかく音が美しい、録音も優秀です。このいきいきした音楽はブリテンが生きていたら、きっと喜んでくれるだろうと思われる、価値ある作品だと思います。

3199051647.jpg
Young Apollo, op.16 (1939)
for piano, string quartet and string orchestra

Nikolai Lugansky/Hallé Orchestra/Kent Nagano

Double Concerto( 1932)
for violin, viola and orchestra

Gidon Kremer/Yuri Bashmet/Hallé Orchestra/
Kent Nagano

Two Portraits (1930)
for string orchestra

Sinfonietta, op. 1 (1932)

Version for Small Orchestra

Recording Bridgewater hall Manchester 1998
Produce Martin Sauer Wilhelm Hellweg

Enginner Jean Chatauret

Erato 3984-25502-2


CMS Records web site  http://cms-records.biz
posted by えんこみ at 00:06| Comment(0) | TrackBack(0) | Gidon Kremer

2013年05月18日

こんなんもあります、クレーメルのアルバム

18ki.jpg
 久しぶりのギドン・クレーメル、ネタ。せっかくヴァイオリンの名手、G・クレーメルのブログ上の分類カテゴリーをつくっているので、これからは、ちょくちょく彼のアルバムの事について、取り上げてゆきたいと思います。

 このクレーメルという人、世界的な人気に比べて日本ではイマイチそれにふさわしい評価が得られていない気が、私にはしています。
 震災直後の日本公演では、大方の有名演奏家が軒並みコンサートをキャンセルしていたにも関わらず、予定どうりに日本国内をまわってくれました。
 でも残念ながら、私の行った九州熊本と福岡の公演は半分も、お客が入っていない有様で、残念であるやら、日本人として恥ずかしいやら、、、どうもなんだかな〜(最近このフレーズ多いですネ)という感じでした。

 世界最高のバイオリニストと言われて久しいクレーメルですが、日本の(あえて書かせていただきます)ミーハーなクラシックファンには、いささか高尚すぎるというか、全く聴衆に媚びない姿勢を貫いているので、それが災いしている部分でもあるのかもしれませんが、私としては、その姿勢が素晴らしいんですよね、、。理想の芸術家というのはああいうものではないかと、、思うのです。

 これは調査した訳では無いのですが、これまでに出したアルバムは恐らく150枚以上で、おそらくは、クラシックの演奏家で、ここまでの数を出している人はほとんど居ないのではないかと思います。おバカなファンの私は、それらのほとんどを手に入れてしまいました。べつにコンプリートコレクションを目指しているわけではないのですが、自然に集まってしまうんですよね、、。

Loulrie.jpeg

 というのは、彼が選ぶレパートリーがとにかく、知らない曲ばかりなんです。もちろん中にはベートーヴェンとかブラームスとか有名な作曲家の有名曲もあるのですが、ほとんどが隠れた名曲というか、未知のレパートリーに挑戦している事が多いです。
 音楽関係者としては、素晴らしい演奏家が自分の意志で取り上げた未知の曲をどのような演奏で仕上げているのかは、とても気になるところです。

 今日取り上げるのは、「Arthur Lourie」の作品集。レコード会社はドイツグラモフォンで、とてもメジャーな会社です。良く出したなこのアルバム、、今なら出ませんよね、こういう売れにくいアルバムは、、。

 このアルバム大きく分けて3曲の作品が収録されていますが、クレーメルの参加しているのは一番長い曲、3曲目のヴァイオリン独奏と、弦楽合奏の為の協奏曲 「Concerto da Camera」(約32分) だけです。
 もちろんクレーメルの参加していない曲もとても興味深い曲です。ルリエは帝政ロシア末期から活動していた作曲家で、当時の様々なイディオロギーのもと、ロシア→ドイツ→フランス→アメリカと居留地を転々と変え、独特な活動をしていた人の様です。現代においては、一般にほとんど忘れられていた作曲家で、このアルバムのリリース(1992)前後、クレーメルがコンサートでも取り上げ、再評価されたようです。

18kumo.jpg

 彼の音楽は一言で言うと、「誰にも似ていない」という感じ、、。あえて言えば、30年後くらいの、バルト三国の作曲家たちに少し似ている作風で、メロディアスでいて、無調的、それでいて、12音的ではなく、民族音楽の様な旋法も感じられますが、きわめて無国籍な作風です。静かな美しさに満ちた曲ですが、第一楽章の最初からヴァイオリンの無伴奏ソロで始まるという、異例の形式を持った曲です。かなり多くの時間をヴァイオリンソロあるいはもう一台のヴァイオリンやチェロなどとの2声重奏が占めており、いわゆるトウッティーでの演奏シーンはとても少ない変わった曲です。今回聴いていて、同時代のロシアの作曲家、プロコフィエフの無伴奏バイオリンのソナタのある部分とそっくりなフレーズを発見しました。これは何か意味がありそうです。どなたかご存知に方、教えて下さい!

 アルバムの音質も素晴らしく、デジタルの長所をうまく生かした、クリアーな音質です。DGの音はこの頃が一番良かった気がします(^_^;) 。

Arthur Lourié (1892-1966)

1. A Little Chamber Music 8:17
Thomas Klug - solo violin
2-5. Little Gidding 14:02
(Four Intonations for tenor with Instrumental Accompaniment on text by T.S. Eliot)
Kenneth Riegel - tenor
6-11. Concerto da Camera 31:53
(for Violin Solo & String Orchestra)
Gidon Kremer - violin

Recording Wiesbaden,Friedrich-von-Thiersch-Saal,6/1922
Exective Producer Wolfgang-Stengel
Recording Producer Peter Laenger
Tonemister Rainer maillard
Recording Engineer Klous Behrens
Editing Peter Laenger

Deutsche Kammerphilharmonie
DG 437 788-2 (1993) Made in Germany

CMS Records web site  http://cms-records.biz
posted by えんこみ at 02:54| Comment(0) | TrackBack(0) | Gidon Kremer

2013年02月24日

ギドン・クレーメルという音楽家について 5

車窓.jpg


 私はいままでに、6回くらい、クレーメルの生演奏を聞いていますが、そのうち2回は何故か、テンションが低いというか、いま一つ集中力に欠ける演奏でした。べつにミスが多いという訳ではなく、楽譜通り間違いなく、演奏しているのですが、音楽がいきいきしていない感じがしました。
そのコンサートでは一部を除いてずっとそんな感じで面白みに欠けました。

 あるコンサートで一部の最初にいきなりバッハのシャコンヌを弾いたとき、かなり音程を外してしまい、クレーメルでもこんなことがあるんだな、と思いましたが、私には、それはそれで、面白く聞けたので、良かったのですが、気の抜けた演奏は残念ですよね。

 若い時の演奏の海賊盤みたいなCDも、持っているのですが、チャイコフスキーのコンチェルトで、どんどんテンポが速くなってしまい、オーケストラが必死で追いかける何て言う場面があったりして、テクニックがある人だけに暴走することもあるみたいです。

私はそういう演奏はそれなりに楽しんで聴けるのですが、先程書いた様に、どこか気の抜けた彼の演奏は苦手です。

相当な数の公演をしている人ですから、たまにはそんな演奏をしてしまうのかも知れませんが、、。

夕焼け...jpg


 あと私があまり好きでないのはピアノのアルゲリッチとの共演です。二人ともスタープレーヤーですし、いつも話題になる組み合わせですが、私にはあまり面白みのない演奏が多いです。テクニシャンどうしの激しいプレーの応酬になることも多いのですが、少し空しいというか、お互い意識し過ぎて演奏している様な気がするんです。
どこも破綻していないのですが、音楽の流れが自然じゃない感じがします。

 クレーメルが割と自由に弾いて、アルゲリッチが一生懸命合わせる、という感じの演奏が多いのですが、私にはあまり楽しめない演奏です。あの自由奔放なアルゲリッチを飼い馴らす(?)んですから、凄いと言えば凄いのですが、音楽的には1+1=2以上の効果は感じられないんです。
 
 それ以外の彼の演奏は、私にとって、いつも、独特の癒しを与えてくれる、不思議な魅力に満ちています。
特に元気がないときや、精神的に疲れているときには、傷口から浸透して痛みを自然にほぐし、元気にしてくれる、特効薬の様な効果があり、どんな音楽にも無い魅力を感じます。

一日でも長生きして、素晴らしい作品をたくさんのこしてほしいものです。

CMS Records web site  http://cms-records.biz
posted by えんこみ at 04:11| Comment(0) | TrackBack(0) | Gidon Kremer

2013年02月23日

ギドン・クレーメルという音楽家について 4

gidon-kremer.jpg

 止まらないクレーメル論、4日目になってしまいました (^_^;) 。

 あまり有名でない曲を、あれだけCDにしている名演奏家はいませんし、あれだけいろいろリリースしているということは、爆発的でないにしろ、それなりに売れているのだと思います。

 わたしもクレーメルの演奏聴きたさと、未知の曲との出会いを求めて購入した彼のCDは、140枚近くになります。すべてがマニアックな曲ではないのですが、半分近くは通常良く演奏されることのない曲ばかりです。
 
 以前ヒマな時に、クレーメルのレコーディング年表をつくって見ようと思った事があったんですが(完成半ばで挫折中(^^))、一番多い年は8枚ものアルバムを録音していました!。演奏活動の合間にそれだけ録音するというのは、ほとんど驚異的なパワーと、相当な執念がなければできないですよね。
はたけ.jpg


 随分前に、過労と胃潰瘍を理由に日本での公演が、キャンセルされたことがありましたが、無理も無い事だと思います。

 いったいどこで、そのようなレアな曲を見つけて来るのか、、?。 これは謎ですが、私が思うにモスクワ音楽院時代のコネクションというか、ロシアの友人達の存在が多い気がします。
 
 クレーメルとともに活動している、バルト三国出身の若者たち、クレメラータ・バルティカとのプロジェクトでいろいろな曲を弦楽合奏用に編曲して演奏しているのですが、それらは全て、幾人かのロシア人作編曲家に依頼しているようですし、カデンッアなども、亡くなった作曲家で、親友のシュニトケに、頼んでつくってもらっていた様です。おそらくは、彼らとの交遊関係のなかから、沢山の音楽的アイデアを得ているのでは無いかと思います。

降臨.jpg

 
 ほとんどのクラッシック演奏家が、古典音楽や、有名曲を、ただひたすら演奏しているのに対して、クレーメルの姿勢はとても変わっているわけですが、そのようにして選んだレパートリーの中から、ピアソラの様に一種の流行の様になってゆくこともあるのだと思います。
 彼はピアソラについて、素晴らしい作曲家であるにもかかわらず、特にクラッシックの世界ではあまり知られていないので、自分の演奏で、ピアソラに興味を持った人は、是非、ピアソラ本人の演奏をCDなどで聴いてほしいと言っています。

 ギドン・クレーメルという人は、昨日書いた様に、何か、人々に良い音楽を知らせたい、という使命感のような物を、強く持って演奏活動をしている人の様です。 ここまで来たら、もう明日も続けます。明日は、クレーメルの活動で私が疑問に思っていること、についても書きたいと思います。  CMS Records web site  http://cms-records.biz
posted by えんこみ at 00:20| Comment(0) | TrackBack(0) | Gidon Kremer

2013年02月22日

ギドン・クレーメルという音楽家について 3

14_gr.jpg
 クレーメルついて2日間にわたって書いてきましたが、彼の創り出す音楽の特徴について、さらに書くとしたら、それは演奏するレパートリーに対する考え方でしょう。
 
 彼はコンサートなどで、伝統的なクラシックの曲と並べて、近代や現代の曲を演奏するということを一昨日書きましたが、これは決して奇をてらっているわけではなく、自分自身が良いと思う優れた曲なら、一般に知られていない曲でも演奏して、人々に知らせなければならない、という使命感からくる選曲のようです。
 
 しかし、彼は現代音楽の「お宅」であるかというと、そうではなく、いわゆる古典的な曲に関する興味、探究心も並外れたものがあります。

 昨年12月25日にクレーメルのブラームスの協奏曲について書きましたが、ブラームス、ベートーベン両方のコンチェルトとも、全て異なるカデェンッアを使って、3回も録音していますし、バッハの無伴奏パルティータ全曲も3回(ソナタは2回)、シベリウスとモーッアルトの協奏曲も2回も録音しています。

はね.jpg

 
 一方、有名な曲でも一回も録音していないものとしては、メンデルスゾーンのホ短調の協奏曲があって、あれは私もあまり好きな曲ではないので、どうでもいいんですが、録音していない理由を知りたい気がします ^^; 。チャイコフスキーの協奏曲は1回だけスタジオ録音していますが、クレーメルはなぜか、「あれは人生最初で最後の録音だ」と、宣言しています。

 クレーメルのレパートリー選びで、もう一つ特徴があるところは、埋もれている、忘れ去られている曲や作曲家にスポットをあてて演奏するということです。
 彼程の名声があれば、有名なコンチェルトやソナタを世界中を廻って演奏すれば、カレンダーは簡単に埋まってしまうでしょうし、それで十分に生活もできるはずです。
 新しい曲や知らない曲を演奏したり、レコーディングする為には、練習や準備などで、かなりの時間をとられるので、それは忙しい演奏家にとって、とても大きな負担になるはずです。
 
 
炭.jpg

 
 今迄に彼が演奏してきたレアな曲を書き出したら、簡単にページがうまってしまいますが、有名な作曲家の作品では、ベートーベンの、「未完のバイオリンコンチェルトの第一楽章」のみ、とか、イタリアの作曲家ブゾーニ(バッハのシャコンヌのピアノ編曲で有名な)のヴァイオリンソナタ、メンデルスゾーンのピアノとヴァイオリンと弦楽合奏の為の協奏曲(メンデルスゾーンが嫌いな訳では無いみたいですね)とか、「そんな曲あったの?」という様なレパートリーを発掘(と言ってよいでしょう)しています。 

 今週はクレーメル・ウイークの様になってしまいましたが、明日も続けさせて下さい m(_ _)m 。

CMS Records web site  http://cms-records.biz
posted by えんこみ at 00:29| Comment(0) | TrackBack(0) | Gidon Kremer

2013年02月21日

ギドン・クレーメルという音楽家について 2

219f.jpg

 ギドン・クレーメルの演奏の何が、それ程、その他の演奏家と違うのでしょうか?

 正確な音程、歯切れよいアーティキュレーション、美しい音色、これらは彼の音楽を説明する上で、決して間違った表現ではありませんが、それだけでは、十分に語り尽くしたとは、とても言えません。
 
 彼がデビューした当時の音楽界を見てみた場合、クレーメルのテクニックは、ずば抜けていたと言って良いと思いますが、現代の状況をみると、彼とほぼ同等と言って良い、技術を持ったヴァイオリン演奏家は、それほど少なくは無いと思います。

 彼は両親ともヴァイオリニストで、祖父も高名なヴァイオリン演奏家であり、子供の頃から高いレベルの教育を受け、モスクワ音楽院で、名ヴァイオリニスト、ダヴィッド・オイストラフに師事して、大成した、素晴らしい演奏家であると言えると思いますが、それらの言葉がクレーメルの本質をあらわすことには、どうしても私には思えません。

219c.jpg


 彼は三冊の本を書いていて、それを読むと彼の音楽と、人間性の関係が良くわかります。

 クレーメルは、経済性と芸術性は、しばしば相反することがあり、優れた芸術は、必ずしも多くの聴衆にアピールするとは限らないとハッキリ言っていますし、経済的な理由で、より多くの聴衆が知っている曲を選んで、演奏したり、それらの理由で、レコード会社にレコーディングする曲やメンバーを強制されることを、とても嫌っています。
 
 その様なポリシーを持ちながらも、活動を続けることが出来るのですから、それは彼の実力の成せる技だと、言って良いとおもいますが、レコード会社にとっては相当にやりにくい相手だと思います。

Stargeiger-Gidon-Kremer-kom.jpg


 彼の場合、実際に、レコード会社経由で、あるコンチェルトを、ある指揮者と録音した、という情報が流れたにもかかわらず、いつまで経っても発売されず、随分たってから、全く違う指揮者で、リリースされたこともあり、「あーあの指揮者とはあわなかったんだな、、」と思う様な事はけっこうあります。
 
 彼の本にも、ヴィヴァルディの「四季」を録音したときの、指揮者、クラウディオ・アバドとの確執について、細かく書いてありますが、ある楽章のテンポについて意見が対立し、録音し直す、し直さない、アルバムを出す、出さないと、かなりもめたらしく、その時のレコード会社はかなり大変な目にあったものだと思いました。
 
 その辺りの話を本に書いてしまうところが、クレーメルの面白いところでもあると思います。その話には笑ってしまう様な「落ち」もあって、興味のある方は是非読んでみて下さい。「ギドン・クレーメル  琴線の触れ合い」(音楽之友社)、短編のエッセーをまとめたもので、読み易く、面白い話が多いです(明日もこの話題を続けます)。  CMS Records web site  http://cms-records.biz


posted by えんこみ at 00:38| Comment(0) | TrackBack(0) | Gidon Kremer

2013年02月20日

ギドン・クレーメルという音楽家について

219.jpg

 このブログに度々登場するヴァイオリニスト=音楽家、ギドン・クレーメルという人について少し書きたいと思います。

 1946年、バルト三国の一つ、ラトビア共和国で生まれた彼は、もう60代も半ばになりつつある演奏家です。

 私が初めて彼の演奏を聴いたのは、もう35年以上まえ、FM放送でラジオから流れてきたバルトークのヴァイオリンソナタの、ある楽章を耳にした時でした。一切の予備知識どころか、たまたまスイッッチを入れた時に放送していた番組をきいたのですが、流れてきたヴァイオリンの音を聴いた途端に、その音色に耳を奪われました。
 
 その時は何の曲かもわかりませんでしたし、曲が終わって解説者がナレーションを入れる迄、演奏者の名前も知りませんでした。ただ当時よくしていた様に、聴き始めてすぐに、あらかじめテープを入れておいたラジカセの録音ボタンを「ガチャン」と押しました。

219d.jpg


 当時彼は、まだモスクワ音楽院出身の新進ヴァイオリニストで、チャイコフスキーコンクールやパガニーニコンクールで優勝したエリート音楽家として、話題になっており、当時の演奏家としては珍しく、コンサートなどで、伝統的なレパートリーと並べて、近代や現代の音楽を取り上げるラディカルな一面も持つ、奇才として一部の音楽愛好家の間で話題になっていました。
 
 録音したカセットで、クレーメルの演奏を繰り返して聴くうち、第一印象の強烈さは、心に染み渡る、深い感動へと変わって行きました。

 その後私が最初に手に入れた彼の作品は、モスクワ時代に録音した「バッハの無伴奏パルティータ」でした。まだ若く、あまりいろいろな音楽を知らなかった私でしたが、演奏の説得力とともに、初めて聞く無伴奏ヴァイオリンの音色と名曲の魅力にも取り付かれました。同時にバッハの音楽の豊かさにも触れる事ができました。

 その他に次々とチャイコフスキーのコンチェルト、プロコフィエフのソナタ、FMできいたバルトークと、当時のソビエト連邦の国営レーベル「メロディア・レコード」のLPを買ってクレーメルの演奏の素晴らしさを知ると同時に、クラシックの名曲、長い年月を経て現代に伝わった、優れた作曲家達の作品を楽しむことができました。 
 それらは当時私が聴いていた、ジャズや、ロック、プログレや、民族音楽とともに、私の音楽的な価値観の基礎をつくってくれたのかも知れません(明日に続く、、)。   CMS Records web site  http://cms-records.biz/

Gidon Kremer.jpg

posted by えんこみ at 01:45| Comment(2) | TrackBack(0) | Gidon Kremer

2013年02月15日

イザイ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ 作品27

スターバックス.jpg

 今日は福岡は雨、マイナスイオンたっぷりの町並みを歩いてリラックスできました、、(^^) 。

 こんな日は、家の中で静かにヴァイオリンの調べに耳を傾けるのも良いものです、、。

 というわけで、久々のギドン・クレーメルネタといきましょう。
ウジェーヌ・イザイ(1858-1931)はベルギーのヴァイオリニスト兼作曲家、一般の知名度は今ひとつですが、ヴァイオリンを勉強している方達にとっては、ちょっとは知れた名前です。
 
 多分ヴァイオリンの曲しかつくっていないせいか、作曲家としては一般の音楽愛好家にはあまり馴染みがない名前かもしれませんが、この人のつくった。無伴奏ヴァイオリンのためのソナタは、なかなかすごい曲です。
 
 無伴奏ヴァイオリンということは、伴奏なしで、ヴァイオリンだけ、ソロで演奏する曲なわけですが、ピアノならソロはあたりまえですが、ヴァイオリン一台だけの曲というのは、あまりありません。誰でも名前だけは知っているバッハが、有名な無伴奏の曲をつくっていて、これは比較的よく演奏されますが、この曲が演奏されることはとてもすくないです。その最大の理由は、あまりにも難し過ぎるということにつきます。
ikea2.jpg

 ヴァイオリンの難曲というと、ピアノのリストとならんで、パガニーニの名前がよく挙りますが、イザイの無伴奏ソナタ は、ある意味、それを遥かに越える、技術と高い音楽性を求められる曲だと思います。
 
 パガニーニが、演奏者に、細かい音符や、早いパッセージを聴き所として、いわゆる名人芸を要求しているのに対して、イザイの場合はその様な、派手な技巧だけではなく、複雑な和音の重なりや、主題の変奏、多声的な複数のメロディーを歌わせたり、といった、本来バイオリンが不得意である表現がたくさん出てきます。
 
 どう聴いても一人で弾いているようには聞こえないけれども、美しい旋律や、ダイナミックな、まるで、コンチェルトのカデンッアの様なメロディックな箇所や、パガニーニの様に悪魔的で、豪快かつ情緒的なメロディーが複雑に絡み合った、豊かな音楽なのですが、演奏する方はずーっと拷問を受けている様なものですね。

 クレーメルが録音した当時は、まだほとんどこのソナタ全曲を収録したアルバムは、ありませんでしたが、その後に出た他の演奏者による演奏を聴くと、クレーメルの怪物的と言って良いほどの技術と、音楽性がよくわかります。
 一時廃盤になっていましたが、現在は手頃な価格で手に入りますので是非機会がありましたら聴いてみて下さい。

 多声的なアプローチが面白いので、ギターを弾く方も、一度聴くと、とりこになる人も多いようです。

CMS Records web site http://cms-records.biz

 008.jpgイザイ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ 作品27
・第1番ト短調(ヨゼフ・シゲティに)
・第2番イ短調(ジャック・ティボーに)
・第3番ニ短調『バラード』(ジョルジュ・エネスコに)
・第4番ホ短調(フリッツ・クライスラーに)
・第5番ト長調(マチュー・クリックボームに)
・第6番ホ長調(マヌエル・デ・キローガに)
 ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)
 録音:1976年3月11日、8月3日

posted by えんこみ at 04:16| Comment(0) | TrackBack(0) | Gidon Kremer

2012年12月25日

クレーメル 2

空2.jpg 
 エンジニアーの小宮山です。昨日のギドン・クレーメルネタの続きですが、「この一枚」のカテゴリーで、ブラームスの Vlnコンチェルトのアルバムを紹介したいと思います。Beethovenのコンチェルトを3回もレコーディングしているクレーメル氏ですが、Brahmsの協奏曲も3回録音しています。
 一度目がカラヤン+ベルリンフィル(1976年)、二度目が、バーンスタイン+ウイーンフィル(82年)、三度目がアーノンクール+オランダ、コンセルトヘボー(96年)と、本当に豪華な組み合わせです。
 
 かなりの大家でも一生に一度、録音すれば十分と言うか、かなり勇気をもって取り組まなければならない、この難曲を、超一流の指揮者と、オーケストラを相手に何度も録音しているクレーメルという人は、やはり人並みはずれた能力の持ち主と言う他ないでしょう。
 私の一番好きな演奏は、どれも甲乙つけ難いのですが、アーノンクール+オランダ、コンセルトヘボー(96年)の録音です。
 
 理由としては、まず第一にアーノンクールの優秀な指揮で、オーケステレーションがよく整理され、細部にわたって丁寧に描かれていて、管や弦楽器が幾重にも混ざり合ったアンサンブルが、和声的に、とてもくっきりしていて、音楽的によく歌っているところです。
 この演奏を、はじめて聞いた時には思わず、「あーここはこうなっていたんだー」と思いました。
 そのオーケストラに、クレーメルの曖昧さの無いヴァイオリンがからみ、複雑なコンチェルトが実にわかりやすい音楽として翻訳されている気がします。力強いところはより豪快に、繊細なところは、より豊かに、リズミックなところは、より躍動的に、音楽が生き生きとして聞こえます。
 それはライヴにもかかわらず、きわめて鮮明でありながら、豊かな響きも兼ね備えた録音に依るところもある事は、間違いありません。さらにこのアルバムの素晴らしさについて書くとすれば、カデンッアをエネスコの作になるものを使用しており、最初の録音のクライスラー版、2回目のマックス・レーガー版に続いて、とても楽しませてくれます。
 
 この録音では楽章の間が、現場の雑音込みで、恐らくは、そのまま収録されており、コンサートをそのまま収録したであろうことがわかります。一切の編集無しでこの完璧な演奏をする人達は、本当に素晴らしい演奏家達だと驚嘆するほかありません。

CMSレコード HP http://cms-records.biz/

Kremer Brhams.jpg
posted by えんこみ at 02:19| Comment(0) | TrackBack(0) | Gidon Kremer

2012年12月24日

クレーメル

 世の中のほとんどの人が、自分と他人が一緒であることに安心感を持つんですよね。みんなが見ているテレビ番組をみる、流行の服をきる、何か新しい事にチャレンジする時、「人はどうやっているんだろう」と気になるわけです。
 「いや私はそうじゃないですよ」という方もいらっしゃるとは思うのですが、とても多くの人達が他人の動向を気にしながら毎日暮らしているのだと思います。
 12月14日にこのブログでアルバムをとりあげた、ギドン・クレーメルという人は、とことん人と違うことをやりたい人みたいで、インタビューなどでもそういう発言が多いです。芸術家である以上、そう有りたいものですが、そういうスタンスを守ってゆくのは、並大抵のことではないと思います。この人の実力と人気が彼の強烈な個性の主張を是認しているだと思います。
 クレーメルはベートーベンのバイオリン協奏曲を3回録音しているのですが、通常よく演奏されるヨアヒムのカデンッアをプレイすることをなく、3回が3回とも違うものを演奏しています。
 これも彼の執念というか、他にはこのての事をしている人は知りません。
51eKye5ytuL._SL500_AA300_.jpg
写真は2度目の録音 マリナー、アカデミー響と共演、バイエルン放送響、コリン・デイビス指揮とのベルクも入っています。
posted by えんこみ at 14:45| Comment(0) | TrackBack(0) | Gidon Kremer

2012年12月14日

最近聴いたアルバム

CMSレコード、エンジニア小宮山です。レコードレーベルのブログなのに食べ物の話ばかり。というのも何なので、ちょっと音楽の話というか、最近聴いたCDアルバムについて書きます。
「The Art Of Instrumentation : Homage To Glenn Gould」
Gidon Kremer Kremerata Baltica Nonesuch 7559-79634-5
41m5d7cS0lL._AA160_.jpg

 これ実はタワーレコードで買ったんですが、新譜なのに、なぜか1380円だったんですよね。ちょっと安すぎるとは思ったのですが、その安さに負けて衝動買いしたわけで、「何だかなー」という感じです。ギドンクレーメルのファンでなかったら、そんなことも無いんでしょうが、何だか申し訳ないというか、これも自分がレコード制作者の側であるが故のジレンマですね 、、(^_^;) 。

クレーメルといえば、生前のグールドと会って色々な話をした事を、自身の著作に書いていましたが、その時に約束した、R シュトラウスの Vln ソナタのレコーディングが、グールドの突然の死によって文字どおり「亡き者(無き物)」になってしまったことは残念でなりません。
 このアルバムのプロデューサーは、ヘレムート・ミューレ。レコーディングエンジニア出身のベテランのプロデューサーです。欧米ではいわゆるエンジニアプロデューサーと言われるレコーディング作業と録音する音楽の内容の両方の面倒を見るプロデューサーがよくいるんですが、日本ではそういう人材はとても少ないですよね。
 プロデューサーは偉い人で、レコーディングエンジニアは単なる技術者。
この考え方は、全うなようで、実は結構不思議な事なんですよね。
 録音をする技術者はただ器械を操作する人ではなく、その場に鳴っている楽器の音を、どのように記録すれば、良い音楽として聞き手に伝わるかを考えながら、マイクを立てたり、ミキシング作業をしなければならないので、人一倍音楽に詳しく無ければならないんですよ。もちろんある程度楽譜とかも読めなくてはならないでしょうし、ある意味で演奏者よりもシビアに音楽を理解していることを要求される業種です。
 日本のレコーディングの現場に、いわゆるエンジニアプロデューサーがほとんど居ないのは大きな問題だと思います。制作総指揮者のプロデューサーも現場がレコーディングである限り、可能な限り機材や音響の事に詳しくなければ、良い作品は作れないと思いますよ。昨今の予算の少ないプロジェクトならなおさらの事、エンジニアプロデューサーが必要ですよね、、。文章長くなりすぎたので、続きは明日にしましょう。
CMSレコード HP http://cms-records.biz/
tane.jpg
posted by えんこみ at 02:36| Comment(0) | TrackBack(0) | Gidon Kremer