昨日はタイトルの、グールドが弾くパルティータの話に入る前に、自称グールドファンへの苦言が、とても多くの紙面を占めてしまい、本題に入る事ができませんでした (^_^;) 。
バッハのパルティータというと、鍵盤楽器の作品ではない方の、無伴奏バイオリンのパルティータの方が有名で、鍵盤楽器のパルティータはそれに比べて知名度がイマイチですね、、。それにはいろいろな理由があるとは思うのですが、音楽的にはヴァイオリンの方も、鍵盤の方も、バッハの器楽作品の代表曲と言って良い、素晴らしい曲だと、わたしは思います。
ヴァイオリンのパルティータの方はかなりの難曲で、有名演奏家や巨匠達にとって、とても取り組み甲斐のある曲ですが、鍵盤のパルティータは、音楽的には同じ様に素晴らしいものですが、演奏の難易度という点からは、それ程でもなく、プロの演奏家が、コンサートや、レコーディングで、取り上げる曲としては、いささか、地味というか、聴衆へのインパクトが薄いと、以前は考えられていたのかもしれません。
鍵盤楽器の為のパルティータ(BWV825〜830)をグールドは、センセーションを巻き起こした、1955年のゴールドベルク変奏曲の後に録音、リリースしています。ゴールドベルクも、パルティータも、どちらとも、本来、少なくとも当時のコンサートピアニスト達はほとんど取り上げていなかった曲ですし、どちらかと言えば、チェンバリスト=バロック音楽(古楽)の演奏家たちの為のレパートリーだったのかもしれません。
しかしながら、どちらの曲とも、音楽的な内容はとても豊かで、曲集中の、どの曲もが、全て音楽的にとても豊かである、という意味では、平均率クラーヴィア曲集より、優れた組曲であることは間違いないと、私は思っています。平均率はバッハが、プレリュードとフーガという二つの形式を使い、長短それぞれの調で作曲する、という縛りをつくり、ある意味実験的につくった曲集であるのに対して、パルティータは形式や調にそれほどにはとらわれる事無く、自由に書いた曲と言うことが、できると思います。
その辺りの事を、おそらくはグールド氏は深く理解して、ゴールドベルクも、パルティータも演奏、録音して発表したのだと思います。そのような経緯をふまえて考えてみると、ある程度の知名度はあったとはいえ、24歳の新人ピアニストのデビュー盤が、かのゴールドベルク変奏曲であり、それがセンセーションを巻き起こしたということは、本当に画期的な出来事であったと言って間違いないと思います。
知名度があまり無く、人気がない曲でも、良い演奏をすれば、人々の心にアピールする、、、。この信念をもって、CBSレコードのプロデューサーを説得して、アルバムをリリースした、若き日のグールド氏はその件で、最初の賭けに勝ったということになります。
ちなみに、その当時アメリカのチャートをにぎわしていたのは、他でもない、ルイ・アームスロング、サッチもです。グールドのゴールドベルクのアルバムは、1956年に、天才サッチモのアルバムをおさえて、全米一位になったそうです。
これはスゴい事ですね、、。57年前の出来ごとです。

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