2016年01月31日

ピアノと調律師、そしてピアノの演奏者について その4

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          ↑ピアノの弦とチューニングピン


 ピアノと調律師、そしてピアノの演奏者について その4

『調律と調律師について- 3』

 CMSレコードエンジニア、小宮山のブログを普段はお送りしていますが、昨年の12月から、不定期の連載という形で、CMSレコードを主宰しております、私、細川正彦が、「ピアノと調律師、そしてピアノの演奏者について」と題して、文章を書かせて頂いております。

 今日はその四回目。 かなりの長文ですが、できるだけ解り易く書いたつもりですので、最後まで読んで頂ける様、お願い申し上げます。


 これまで書いて来たことについて、短くまとめてから、そのあとに、新しい話を書きたいと思います。

 「ピアノと調律師、そしてピアノの演奏者について その1」で書いた事。

 ピアノを弾く人間、特にそれを職業にして、ライヴハウスなどで演奏している人の中には、意識的に、もしくは無意識のうちにピアノの状態に無頓着になっている人が多いという事実。それを意識しすぎると、仕事に差し障りがある、、ということが現実である。

 「ピアノと調律師、そしてピアノの演奏者について その2」で書いた事。

 調律とは何か?。 調律(ちょうりつ) 整調 (せいちょう) 整音(せいおん)など、いわゆる総合調律について。
 「ピアノと調律師、そしてピアノの演奏者について その3」で書いた事。

 調律とは、とても厳格で、繊細な作業であるが、演奏者はそれ自体に無関心で、その内容について、調律師に任せすぎてはいないだろうかという事。健全なピアノメインテナンス環境を構築するためには、演奏者もしくはピアノオーナーと調律担当者の対話が必要ではないのか、ということ。
 


 さて、それでは、どのようにしたら、ピアノという楽器を良い状態にキープでき、演奏者、ピアノオーナー、聴衆などピアノを演奏して生まれる音楽を楽しむ人達が幸せになれるのか、、について、前回に続いて『調律と調律師について- 3』として書いてゆきたいと思います。

 ここで調律にも善し悪しがある、、ということを書かなくてはならないのですが、これについては、いろいろかきたいことがあります。
 まず、私が調律や、ピアノの機能というものに興味があり、同業者とその手の話をしようとした時に、少なからず、彼らの口から出る言葉があります。

 それは、、、「調律師によって、そんなにピアノの音がかわるものなんですね、、?」というもの、、。

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 これはある意味本当に頭が痛い話です。 ピアノを演奏している人、しかもそれを生活の糧にしている人達の多くが「調律」という仕事を、その程度にしか考えていないという事実を、ほとんどの人は知らないのかもしれません。 
 多くのミュージシャン、ピアノ以外の演奏者は会えば、最近はどんな楽器を使っているのか?、メンテはどこの誰に任せているの?、、等、そういう話に花が咲くわけですが、ピアニストは普段の仕事の環境で、決して自分の楽器を使う事はないとはいえ、あまりにも同じ音楽家としてのスタンスがちがいすぎます。 それはこの文章の第一回目でも書きましたが、ある意味「しょうがない事」、とはいえ、あまりにも残念というほかありません。
 
 「調律師によって、そんなにピアノの音がかわるものなんですね、、?」という言葉は言い換えれば、「調律なんて誰がしても一緒じゃないんですか?」という無言の意志を感じる言葉ですが、、。 コンサートなどで頻繁に演奏している人以外は、多くのピアノの演奏者は仕事で使うお店などのピアノの調律師と会う事はほとんどありません。 ということは、それらの演奏者の場合、知っている調律師は自分の家のピアノを調律する人くらいのものである、ともいえます。 

 これが、調律の仕上がりを、比較する、、ということをしないということを、無意識のうちにしなくなる理由の一つなわけですが、調律は、どこかで誰かがしていて、その現場に立ち会う事はほとんどないし、立ち会いたくても、それはかなわない、、ということが多い、ということもあります。でも、誰がやってもかわらないと思っている時点で、職人(ピアニスト)として、芸術家として、失格だと思いますよ。職人をバカにしています。

 じゃあ、「ピアノなんて、誰が弾いても一緒、、、?」なのですか、、?、と、そう言う事を言うピアニストに尋ねてみたいものです。
 
 では、ここで、良い調律とはどんなものなのか?ということについて、簡単に(1〜3)書いてみたいと思います。

 1 調律の仕上がりが良いこと。

 これに関しては、ときどき、ギターのチューニングメーターで、ピアノも合わせられないんですか?ということを尋ねられますが。多くの音域で、複数の弦が一つの鍵盤に割り当てられており、それらをわずかに、巧妙に音程をずらして音色を造り上げる、、ということが調律作業であり、一本づつの弦のチューニングをする為のギターのチューニングメーターではピアノは調律できません。 i Phone のアプリで、調律専用というのがあるみたいですが、、。 あれはまた別の物です、出来ない事はありません。

 ピアノの調律(音律)は他の楽器とは少し異なっており、かなり大雑把に言って、高いところに行けは行く程、少し低めに、そして、低いところに行けば行く程少し高めに、、という独特のカーブが存在していて、それがしっかり頭に入っていて、なおかつそれを、チューニングハンマーをつかって、ピアノの弦をその音律に正確にあわせる、という作業をしなければなりません。

 このあるべき音律にかなり正確に(厳格に)、合わせせることが出来た時だけ、本来のピアノの音色ができあがり、色々な和音、メロディーを弾いた時にピアノ独特の豊かな広がりのある音響が表現されます。

 これに関しては、残念ながら、調律師の十人のうち一人つまり、、一割に満たない人数(より少ない、、)の人しか、ちゃんと出来ているひとはいません。つまり、世の中のほとんど調律師が、厳しい言い方をすれば、それができていない、というのが現状です。これは、それを望む演奏者がもっと増えれば、改善されるはずなのですが、なかなかそういう方向には現実は向いていません。

 2 調律の持ちが良いこと。

 「調律の持ちが良い」ということはどういうことなのか、、。 これはつまり、調律が終了して、調律師が造りあげた音律が、演奏者が弾いても、弦がすぐにゆるまずに、いつまでも狂わずに同じ音程を維持し続けられるということ。 それから、少し乱暴に弾いても、特定の弦だけが激しくゆるんでしまい、いわゆる、ホンキートンク状態にならない、、ということも大切です。

 これは言い換えれば、狂い易い調律とそうではない調律が存在していて、実は、多くの調律師それをある程度調節して調律する事ができる、、ということなのです。 

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 つまり、安いお金で調律を依頼された場合、いつまでもその調律がもってしまっては、今度はいつ依頼がくるか解りませんから、わざと狂い易く仕上げる、、という技をもっている人は少なからず居る、、ということなのです。
 ですが、もともと調律がヘタで、一生懸命やっても、あまりもたない調律しかできない調律師もたくさん居る、ということも、覚えておいて下さい。 本気でやって、コンサートや、レコーディングで、途中でなおさなくても良い調律が出来る人は、調律の仕上がりが良い人と同じで、ほんの一握りしかいません、残念ながら、、。

 よく、予算のないお店などで、調律師におねがいして、、というか、値切って安くあげてもらうことがありますが、そう言う場合、余程バカ正直な人でない限り、直ぐに狂う様に調律して帰ります。 お金がないので、コーヒーを半分だけ下さい、というお客がいたら、それにしたがって半分だけコーヒーをだしますか?そんなばかなお願いをして、それがかなえられると思っている経営者がいるとしたら本当に情けないことです。

 そして、狂い易くなれば、結局何度も調律しなければならないわけですが、ここで知って欲しいのは、調律作業はピアノの寿命を間違えなく縮めるということです。 何度も何度も弦をハンマーで引っ張れば、弦はダメージを受けますし、調律の仕上がりが悪ければ、狂いも多いですから、その分多めにひっぱってダメージも大きくなりますし、弦をとめている、チューニングピン(弦をとめている黒い棒状のもの)を何度も大きく回すと、だんだんゆるんで来て、しまいには調律が不能になります。そういうピアノをよくライブハウスで見ますね。

 これに関しては、上手い調律師ほど、チューニングピンをできるだけ水平にまわして(アップライトの場合垂直に)、ピンと、ピンが刺さっている板に負担をかけない様に作業をしています。 ピンは覗いてみると、金色に塗装したフレームの金属盤にささっている様に見えますが、それは表側だけで、ピンの先端が刺さっている場所(内側)は、木製の板なのです。 不必要に何度もピンをぐりぐり回してしまえば、当然差し込まれている木の板の穴は大きくなってゆるんでしまいます。

 よく、調律を頼む予算がない、と言って、お店の人が、チューニングハンマーを手に入れて、自分で調律をなおすおこがありますが、そういう素人が、ピンを回して、調律のまねごとをするのが一番ピアノに良く無いのです。


 3 調律だけでなく、整調、整音など、ピアノの内部の事もわかって、調整することができること。

 ピアノと調律師、そしてピアノの演奏者について その2『調律と調律師について-1』のところで書きましたが、調律以外の作業、つまり、メカニズム(鍵盤まわりのネジやバネなど)の調整や、ピアノの弦を打って、直接音を出している、ハンマーの状態を調節して音色をコントロールすることができて、初めてちゃんとピアノの面倒を見られる調律師である、と言えるわけですが、これもまた、調律師の80%以上の人は、この作業をちゃんと出来ない、というのが現実です。 
 こういった修理というか、調整は主に、ピアノの製造工程、つまりピアノ工場での作業経験がない人には難しい作業です。 また、仮に、そういった職務経験がある調律師でも、ごく若い時にそれを経験しただけで、調律を本業にしてからは、主に調律作業だけで、それらの作業実績の少ない人は、それらをしっかり行えるということは滅多にありません。 医学の世界でいえば、手術経験のない医師とおなじで、いきなりお腹を開いてもろくな施術はできないどころか、患者の生命を奪ってしまう可能性すらあります。

 医師免許をもっていれば、だれでも立派に手術できるわけではない、という様に調律師ならだれでも、整調、整音ができるというわけではありません。

 特に整音作業、つまりハンマーに針を刺したり、削ったり、硬化材を塗ったりという作業は、慣れない人間がやれば、ハンマーの寿命そのものを縮めるどころか、一発で交換しなければならなくなってしまうこともあり、経験と慎重さが必要なとても難しい作業です。

 ここまで書いて私が他に言いたい事としては、仮に調律作業(チューニング)が上手くても、整調、整音が下手な調律師もいますし、整調、整音が上手にできる技術者でも、調律が巧くない、、という調律師も存在します。 なぜならば、それらの技術は全く別の作業なので、ピアノを良い音に保つという意味では共通の目的をもってやる作業ではありますが、それぞれの技術は全く別のものである、ということです。

 これらの作業を上手にこなす為には、実際の仕事の現場だけでなく、自身で工場を持ち、いろいろと実験や、試行錯誤を繰り返して、言い換えれば、失敗も繰り返して、徐々に技能を身につけてゆかなければなりません。

 一般家庭では電気ピアノが多く生のピアノ自体の数が減っている昨今、調律師という職業を生業にし、自身の力で研究をし、技能を高めてゆくことは並大抵のことではなく、収益を維持しつつ、ピアノと言う楽器の状態を、いろいろな角度から見極めながら調整作業を行ってゆくということは、余程の情熱がなければできないことです。

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